恋の罪
2011, 11. 20 (Sun) 20:05
渋谷区円山町の古いアパートで、マネキンと接合された女性の死体が発見された。
殺人課の刑事・吉田和子(水野美紀)は、失踪した女性のリストから捜査を進めていく。
売れっ子小説家の妻いずみ(神楽坂恵)は、安定した生活を送りながらも虚しさを感じていた。
大学で日本文学を教える助教授の美津子(冨樫真)は、円山町で体を売るふたつの顔を持っていた。
『冷たい熱帯魚』に引き続き、園子温監督が90年代にマスコミを賑わせた“東電OL殺人事件”からインスパイアされたサスペンスドラマ。
ある殺人事件を巡り、浮かび上がってくる3人の女性の心の闇を鮮烈な映像で描く愛の物語。
2011年 11/12公開 日本映画
監督 園子温
「堕ちた女」「堕ちて行く女」「境界線の女」
それぞれ、どこかネジが外れていて、まともな人間が一人もいません(苦笑)
ミステリーのオチは単純でストーリーも若干強引、過剰な部分が多いけど、結論から言うと、面白かったです!
園監督は詩人ですね。
田村隆一の「言葉なんか覚えるんじゃなかった」は、抽象的ですが、なるほどなぁと思います。
セックスに取り付かれる「刑事」「一流大学の助教授」「貞淑な主婦」3人の女性の二面性と欲望、抑圧、解放が描かれ、性にはけ口を求める女の闇を、辛辣で過激に追求している作品でした。
「冷たい熱帯魚」「愛のむきだし」など、崩壊していく人間を描く園監督の作品は、好き嫌いは別として、邦画を殆ど観ない自分に取って、何か気になる変な嵌まり(笑)を与えてくれます。
「健全な作品であふれる日本映画をひっくり返したい」と言われてる監督ですが、確かにこのようなジャンルが増えて欲しいと願いますので、頑張って頂きたいです。

夫と娘を持つ身でありながら、不倫に走る殺人課の女刑事・吉田和子(水野美紀)。
いきなり全裸の水野美紀にビックリ!
(こんな雪乃サン見たら、真下クンはどんだけショックをうけるやら~笑)
事件を捜査する彼女は、黒子のような立ち位置で少し存在が薄くなっていますが、特殊な職業である以外、穏やかで幸せな家庭を持つ普通の女性が、浮気に走るのはそう珍しくはないでしょう。
「願望」だけ抱く主婦も多いと思います(苦笑)
和子の登場シーンは、いつも雨降り。
何でこんな男と?!と思うし、和子の行動もよく分からないけれど、客観的に事件を見つめる彼女から、女の二面性や深い闇を感じさせられます。
堕ちるか堕ちないか…水野美紀の感情を抑えたギリギリな演技が良かったです。
不倫相手は、アンジャッシュ児島さん。
今回は相当なドS、下劣で非人情な男。
「フリーター、家を買う」でも思ったけど、表情を変えず、飄々としながらの芝居が上手いわ!

人気作家の貞淑な妻・菊池いずみ(神楽坂恵)。
夫に従順でありながら、心が満たされない生活に、「何かしたい」欲望に囚われていくいずみは、パート先のスーパーでモデルにスカウトされる。
服がはがされると同時に、抑えていた気持ちもはがされ、更なる刺激を求めるようになったいずみは、円山町で立ちんぼをしている尾沢美津子(冨樫真)と出会う。
昼は大学の助教授、夜は売春婦の美津子は、いずみを奈落の底まで突き落とす存在となる。
ファザコンを通り越した実父への想い、母親との確執、インテリな家庭環境が生み出したのだろうか、果てしなく下品で淫乱な女が口にする哲学が凄い。
上手いのか下手なのか分かんないけど、とにかく冨樫真の怪演は間違いなく、年増でガリガリな肉体と貧乳の娼婦に、「オマエ、私のとこまでキッチリ堕ちてこいっ―!」て言われたら、いずみでなくても「はい~!」と返事せざる終えないかも(苦笑)
美津子の母親・志津(大方斐紗子)がこれまた凄い!!
娘の売春行為を知っている母親の、「ところで売春の方は如何ですか?」から始まるお上品なティーパーティ(笑)シーンは、世にも恐ろしい光景。
「わたくしの血筋ではなく、父親の血筋に似たこの子は、この上なく下品でしょう」
「あなたもセックスなんて下品な行為に負けてはだめなのですよ」
「淫乱娘は死ね!!」「そっちこそ死ね!クソババア!」と、まあ、品が宜しいのやら悪いのやら。
大方斐紗子も怪演ですね~笑いつつもスッゴク怖かったですよ。

紅茶や石鹸、スリッパの位置まで、決めたこと以外は受け付けない神経質な旦那・由紀夫(津田寛治)を、「ピュアな人」と言ういずみですが、彼女こそピュア(おバカさんかも)であり、堕ちるところまで堕ちていく過程は、極端ではあるけれど、「ああ、いるだろうな、こんな人」と思いました。
ウィンナーがフランクフルトになったり、AV撮影に喜んで出かけたりと笑いのエッセンスも加えながら、いけない事してるのに、生き生きとしていくいずみの変化は面白いものでした。
他の二人は、強かに二面性を持ち合わせていたけれど、いずみは抑圧の解放から、キッチリと別人に生まれ変わったのか、それとも本来の自分になったのか…。
こんなタイプは、本当に危険ですね。
真っ裸で鏡に向かうシーンが長すぎだったけど、神楽坂恵の巨乳は男性陣の目の保養になるのでしょう(笑)
彼女の芝居は、ちょっと浮いたようにも感じましたが、ラスト間際の豹変は凄まじいものでした。
この映画は女性賛歌だそうですが、登場する女性たちの心理は簡単に理解できず、共感するにはなかなか難しかったので、同じ女として「そうなのか…?」と首は傾げます。
女性は男性より性的抑圧はあるのだろうけど、いずみは世間知らずの無知な女だし、和子にしても、こんなのを望んでるのかぁ~と不思議な感覚になって、色々な事情設定はされてるけど、単なるセックス依存症みたいなものじゃぁないかしら…とも思ってしまいます。
ストレスのはけ口や変身願望といったものが、全て恋愛に向くとも思えないのですが、少なくともこの3人は、恋を求めても、愛に向かえないのだと感じました。
コメント
mezzotint
園子温ワールド!
今晩は☆彡
全開でしたね。私大好きなんです!
でも一般受けはしないですね。
あの何ともいえない世界観にハマっています。
にゃむばなな
こんにちわ
そうですね。ある意味この映画ではピュア=おバカさんと描いている部分も大いにありますよね。
それにしてもこの映画に出てくる女性陣の迫力は凄かったですわ。まさかOPの水野美紀さんの全裸シーンの印象がここまで薄くなってしまうとは!
オリーブリー
mezzotintさんへ
賛否は分かれそうですが、園監督作品、癖になる人にはなるでしょねぇ~(私もその一人です~爆)
言葉で言うより観て感じる世界観でしょうね。
オリーブリー
にゃむばななさんへ
こんにちは。
そうそう、OPでビックリしましたが、他二人の女優があまりにもな脱ぎっぷりと怪縁で、水野美紀のそれな場面は必要ありとは思えない結果となっちゃった。
>ピュア=おバカさんと描いている部分
「主人は他に仕事場がある」いずみ発言に、意味ありげな表情を浮かべた友人達が絶妙でした(笑)
何も疑い持たないアンタが不思議(苦笑)
ノルウェーまだ~む
気になる日本映画
オリーブリーさんもそうですね☆
邦画で気になるのは、いまや園監督だけですよね~
私もどの女性にも共感を抱くのが難しく、世の男性が女性の二面性に驚いて「誰しもそうなんだ・・・」みたいに思っているのが嫌だなーと思っているところです。
実際の「東電OL]の事件を調べると、ようやく納得というか、心理を理解できました。
オリーブリー
まだ~むさんへ
こんばんは。
男性側の解釈に首が傾くトコはあるし、共感できない女性ばかりだけど、いるな~こんな女性、、、とは思いましよね。(特にいづみ)
園監督の容赦ない作品作りは凄いです。
後は好き嫌いだけど、このテの監督さんがたくさん出てくると邦画も変わるのかなぁ~(*^-^)
sakurai
雪!
いかがですか?
めったに降らないとこでは、大変ではないかと。
この辺は、もうあきらめ状態・・。
早く春が来て欲しいです。。。
つうことで映画。
凄いと思いました。
なんつか、突きつけられ、これがオレの絵だ!と、度ストライクの玉をドスンと投げつけられ、腹にぐわわーーんときましたが、それは快ではない。
当然、好みの問題で、好きだろうが、嫌いだろうが、んなもんかまわず作ってらっしゃるでしょう。
なもんで、今回は苦手でした。
役者の凄さは堪能しましたけどね。
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