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備忘録として更新します。コメントありがとうございました。

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ニューヨーク郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、8か月前に息子を交通事故で失い、悲しみから立ち直れず、夫婦関係もぎこちなくなっていた。
ある日、ベッカは息子の命を奪ったティーンエイジャーの少年と遭遇し、たびたび会うようになる。


ピュリツァー賞受賞の同名戯曲を映画化。
絶望の中でも前向きに生きようとする夫婦の絆の物語。
プロデュースも務めたニコール・キッドマンは、第83回アカデミー賞主演女優賞にノミネート。

2011年 11/5公開 アメリカ映画
監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル
悲嘆からの解放{★★★★4/5}

一人息子である4歳のダニーは、愛犬を追いかけ道路に飛び出し車に轢かれ亡くなった。
息子の面影から逃げるように、身の回りの物を処分しようとするベッカに対し、一見普通に振舞う夫のハウィーは、動画を見ては息子を思い出す。
受けた哀しみは同じでも、対処の仕方が違う二人は、乗り越えらないまま日々を過ごしていた。

静かな中に激しさのある作品でした。
哀しみの日々をあえて普通に暮し、凛としていて態度も冷やかなベッカから、より深い喪失感が伝わります。
二コールの演技が素晴らしかったです。
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拭い去ろうとすればするほど、ベッカの悲しみは怒りに変わり、情緒不安定になって爆発する。
夫に誘われグループセラピーに出席すると、同じ境遇の夫婦に対し「は?天使になって召されただ?冗談じゃない」みたいに毒づき、何の救いにもならない。
スーパーでお菓子をねだる子供を叱る母親にはビンタをあびせ、心配する母(ダイアン・ウィースト)には、「麻薬中毒で死んだ兄と息子を一緒にするな!」と反発する。
自分と質の違う悲しみの捉え方をする人間が許せないベッカは、ある日ダニーを轢いたジェイソン(マイルズ・テラー)を偶然見かけ、公園のベンチで話をするようになる。
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子供を失うとてつもない悲しみに、人はどう向き合うことができるのか。
周囲の慰めも、同じ境遇を経験した親も支え合う夫婦であっても、誰1人として自分と同じ気持ちであることはないのでしょう。
ベッカは、加害者の高校生と話すようになり、ハウィーはセラピーで知り合ったギャビー(サンドラ・オー)と親しくなる。
こんな時こそ、慰め合うべき夫婦が、それぞれ別の癒しを求め始め、夫婦は壊れてしまうのか。

中盤、携帯の動画が削除されてしまったことから、二人は本音をぶつけ合う。
「存在していた事を消そうとしている!」「あの時、私がああしていたら!」「オレが犬を飼わなかったら!」…。
ニコールとアーロンの渾身の芝居に、心に深い傷を負った二人の気持ちが痛いほど伝わり、後悔すればキリがない複雑な感情に苦しくなります。
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ベッカはジェイソンを責めることは一切なく、むしろ彼の立場を十分に理解し、おだやかな状態を取り戻したかのような時間を過ごす。
それは何故か…。
息子が道路に飛び出したのは、自分の落ち度であるとずっと自身を責めていたから。
ベッカは、ジェイソンと同じ罪の意識を背負い、贖罪の想いに囚われていた。
ジェイソンが描く、パラレル・ワールドがテーマのコミック“ラビット・ホール”。
もうひとつのハッピーな人生があると言う視点が、ベッカに安らぎをもたらし、大学生となり新たな人生へ旅立つジェイソンに、おそらくダニーの影も見ていたのでしょうか。
自分も新しい一歩を踏み出す時が来ていると悟ったベッカは、初めて心から泣くことが出来たのかも知れません。

家を売ると決めたハウィーは、客に「息子は表で事故死した」と話してしまう。(そんな事を話したら、売れるわけないだろう~苦笑)
当然、お客夫婦は「残念ですね」と言葉をかけてくれる。
彼は自分の境遇を誰にでも知ってもらい、共感して欲しいようです。
言うことを聞かない犬についついあたってしまったハウィーが、謝りながら涙ぐむ胸の内が切ない。
そんな彼はギャビーの家を訪ねるが、玄関先で思い直す。
いつまでも慰められていたいと願っていては、先へ進めないことに気づいたのでしょう。
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「悲しみは消えるの?」と問うベッカに、母は言います。
「悲しみは消えないけれど、最初は大きな石でも時間が経てば小石に変わるのよ。忘れてしまう時もあるけど、ポケットに手を入れると小石があるの。でも小石を入れておくのは大きな辛さではないの」と。
多かれ少なかれ、辛い出来事を経験した者には、人生の先輩から口にされる言葉は心の底まで染み渡る。
ダイアン・ウィーストの包み込むような優しさと慈悲深さで語られると、これまで圧し掛かっていたモヤモヤが一気に浄化されていくかのようでした。

夫婦はそれぞれ別のきっかけから、一歩進み出すことができました。
どんなに苦しみ抜いても、結局は自分の力で乗り越えていくしかなく、意外と答えはありふれたものしかないのだと、優しく教えてくれる。
息子の死を受け入れるにはまだ時間がかかるだろうけど、互いに傷をなめ合うよりずっと良かったのだろう。
重いテーマを鋭く丁寧に、また「有難迷惑」なユーモアも入れつつ、夫婦の喪失に違和感なく寄り添うことができる良作です。
母親の言った通りに、小石になる日は必ずやってくるからと、希望を持たせてくれる作品でした。
2011.11.14 / Top↑
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