心のままに映画の風景

備忘録として更新します。コメントありがとうございました。
2018年06月 ≪  12345678910111213141516171819202122232425262728293031 ≫ 2018年08月
TOP映画 ら行 ≫ ラビット・ホール

ラビット・ホール

175_1975115321RABBIT HOLE

ニューヨーク郊外に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウィー(アーロン・エッカート)夫妻は、8か月前に息子を交通事故で失い、悲しみから立ち直れず、夫婦関係もぎこちなくなっていた。
ある日、ベッカは息子の命を奪ったティーンエイジャーの少年と遭遇し、たびたび会うようになる。


ピュリツァー賞受賞の同名戯曲を映画化。
絶望の中でも前向きに生きようとする夫婦の絆の物語。
プロデュースも務めたニコール・キッドマンは、第83回アカデミー賞主演女優賞にノミネート。

2011年 11/5公開 アメリカ映画
監督 ジョン・キャメロン・ミッチェル

悲嘆からの解放{★★★★4/5}

一人息子である4歳のダニーは、愛犬を追いかけ道路に飛び出し車に轢かれ亡くなった。
息子の面影から逃げるように、身の回りの物を処分しようとするベッカに対し、一見普通に振舞う夫のハウィーは、動画を見ては息子を思い出す。
受けた哀しみは同じでも、対処の仕方が違う二人は、乗り越えらないまま日々を過ごしていた。

静かな中に激しさのある作品でした。
哀しみの日々をあえて普通に暮し、凛としていて態度も冷やかなベッカから、より深い喪失感が伝わります。
二コールの演技が素晴らしかったです。
7317_4371945733RABBIT HOLE
拭い去ろうとすればするほど、ベッカの悲しみは怒りに変わり、情緒不安定になって爆発する。
夫に誘われグループセラピーに出席すると、同じ境遇の夫婦に対し「は?天使になって召されただ?冗談じゃない」みたいに毒づき、何の救いにもならない。
スーパーでお菓子をねだる子供を叱る母親にはビンタをあびせ、心配する母(ダイアン・ウィースト)には、「麻薬中毒で死んだ兄と息子を一緒にするな!」と反発する。
自分と質の違う悲しみの捉え方をする人間が許せないベッカは、ある日ダニーを轢いたジェイソン(マイルズ・テラー)を偶然見かけ、公園のベンチで話をするようになる。
338528_002RABBIT HOLE
子供を失うとてつもない悲しみに、人はどう向き合うことができるのか。
周囲の慰めも、同じ境遇を経験した親も支え合う夫婦であっても、誰1人として自分と同じ気持ちであることはないのでしょう。
ベッカは、加害者の高校生と話すようになり、ハウィーはセラピーで知り合ったギャビー(サンドラ・オー)と親しくなる。
こんな時こそ、慰め合うべき夫婦が、それぞれ別の癒しを求め始め、夫婦は壊れてしまうのか。

中盤、携帯の動画が削除されてしまったことから、二人は本音をぶつけ合う。
「存在していた事を消そうとしている!」「あの時、私がああしていたら!」「オレが犬を飼わなかったら!」…。
ニコールとアーロンの渾身の芝居に、心に深い傷を負った二人の気持ちが痛いほど伝わり、後悔すればキリがない複雑な感情に苦しくなります。
338528_007RABBIT HOLE
ベッカはジェイソンを責めることは一切なく、むしろ彼の立場を十分に理解し、おだやかな状態を取り戻したかのような時間を過ごす。
それは何故か…。
息子が道路に飛び出したのは、自分の落ち度であるとずっと自身を責めていたから。
ベッカは、ジェイソンと同じ罪の意識を背負い、贖罪の想いに囚われていた。
ジェイソンが描く、パラレル・ワールドがテーマのコミック“ラビット・ホール”。
もうひとつのハッピーな人生があると言う視点が、ベッカに安らぎをもたらし、大学生となり新たな人生へ旅立つジェイソンに、おそらくダニーの影も見ていたのでしょうか。
自分も新しい一歩を踏み出す時が来ていると悟ったベッカは、初めて心から泣くことが出来たのかも知れません。

家を売ると決めたハウィーは、客に「息子は表で事故死した」と話してしまう。(そんな事を話したら、売れるわけないだろう~苦笑)
当然、お客夫婦は「残念ですね」と言葉をかけてくれる。
彼は自分の境遇を誰にでも知ってもらい、共感して欲しいようです。
言うことを聞かない犬についついあたってしまったハウィーが、謝りながら涙ぐむ胸の内が切ない。
そんな彼はギャビーの家を訪ねるが、玄関先で思い直す。
いつまでも慰められていたいと願っていては、先へ進めないことに気づいたのでしょう。
338528_006RABBIT HOLE
「悲しみは消えるの?」と問うベッカに、母は言います。
「悲しみは消えないけれど、最初は大きな石でも時間が経てば小石に変わるのよ。忘れてしまう時もあるけど、ポケットに手を入れると小石があるの。でも小石を入れておくのは大きな辛さではないの」と。
多かれ少なかれ、辛い出来事を経験した者には、人生の先輩から口にされる言葉は心の底まで染み渡る。
ダイアン・ウィーストの包み込むような優しさと慈悲深さで語られると、これまで圧し掛かっていたモヤモヤが一気に浄化されていくかのようでした。

夫婦はそれぞれ別のきっかけから、一歩進み出すことができました。
どんなに苦しみ抜いても、結局は自分の力で乗り越えていくしかなく、意外と答えはありふれたものしかないのだと、優しく教えてくれる。
息子の死を受け入れるにはまだ時間がかかるだろうけど、互いに傷をなめ合うよりずっと良かったのだろう。
重いテーマを鋭く丁寧に、また「有難迷惑」なユーモアも入れつつ、夫婦の喪失に違和感なく寄り添うことができる良作です。
母親の言った通りに、小石になる日は必ずやってくるからと、希望を持たせてくれる作品でした。

Comment

まさしく。
編集
そうなんです、そう思うのですけど、我が家では内容をほとんど書きませんでした。
感想になってなくて困りました。(書き直そうかな~?)
2011年11月15日(Tue) 00:31
ボーさんへ
編集
こんにちは。

言葉で伝えるより、観て感じて欲しいってボーさんのご意見も良く分かりますよん!
喪失感って、言葉で説明できるような感情ではないですものね、その辺りは、ニコールが抜群の演技力で表現していたと思います。
2011年11月15日(Tue) 11:28
編集
悲しみを癒すには、肉親の死を受け止めるには決まった方法なんかないんですよね。普通に考えたら加害者の少年といることで安息を覚えたりはしないと思うだろうけども、私はそういうことだってあっても良いと思えました。許すとか許さないとかは彼側の受け止め方のことであって、そんなことは関係なく彼女はあくまでも自分のために彼と会っていたのだし。
おばあちゃんのセリフに泣けましたよ。自らの経験から紡ぎだす言葉。あれは彼女だけでなく観ている人全員に語りかけてました。地味ですが素晴らしい作品です。
2011年11月15日(Tue) 13:15
KLYさんへ
編集
>彼女だけでなく観ている人全員に語りかけてました。

仰るとおりです。
どんなに辛いことも、いつか、そうなるんですよね。
私も涙が溢れました。

普通ならハウィーのように、顔も見たくない状態で怒り爆発でしょうが、ジェイソンと自責の念を共有できたベッカの気持ちはよくわかります。
加害者の本心を知ることで、乗り越えられることもあるような気がしました。

本当に、防ぎようのない事故なんですよね、、、
ジェイソンだって、突然、飛び出されて、、、彼だって、ポケットに小石があり、一生背負うと思いますよ。
「あの時、こうしていたら…」どんな時でも絶対に思う。
でもそればかり考えていても、前には進めないんですよね。

それにしても今年のアカデミー作品賞は、地味だけど良作が多かったですね~♪
2011年11月16日(Wed) 12:48
なんで
編集
予告であの母の言葉、流しちゃったんでしょうね。
結構、何度も聞いてしまったんで、若干感動が薄れましたが、それでもダイアン母の言葉が素晴らしかったです。
悲しみを忘れることをいけないことだと縛りつけるような気もしましたね。次に進んではいけない・・みたいな。
でも生きて行く人間ってのは辛くて、強いですね。
そんなことを感じました。
2012年02月12日(Sun) 12:02
sakuraiさんへ
編集
これ、あまり行かない劇場での公開だったので、予告は観てなかったです。
そうなんですか、、、予告って良くも悪くも難しいですよね。

辛い経験し多た分、深みのある人生が送れると思ってます。
こんな作品観ると、特にそう感じますよ。
2012年02月13日(Mon) 14:39












非公開コメントにする
Trackback

Trackback URL

ラビット・ホール
ニコール・キッドマンが自ら主演と製作を務め、第83回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたヒューマンドラマだ。ピューリッツァー賞、トニー賞を受賞した戯曲をジョン・キャメロン・ミッチェル監督が映画化した。事故で我が子を失った夫婦がその死を受け入れ新たな...
2011年11月14日(Mon) 20:27
ラビット・ホール/ RABBIT HOLE
ランキングクリックしてね←please click ピュリツァー賞とトニー賞に輝く原作戯曲に惚れ込み、ニコール・キッドマン自身が映画化に奔走し、自身初のプロデュース&主演で 「めぐりあう時間たち」以来8年ぶりのアカデミー賞&ゴールデングローブ賞主演...
2011年11月14日(Mon) 22:38
ラビット・ホール
ラビット・ホール
2011年11月14日(Mon) 23:20
ラビット・ホール
ラビット・ホール - 映画ポスター - 11 x 17「ラビット・ホール」は、子供を失くした悲しみに向き合う夫婦の痛ましい物語だが、ファンタジーやユーモアをにじませる演出が絶妙。希望は ...
2011年11月14日(Mon) 23:43
ラビット・ホール
パラレルワールドとタラレバワールド 公式サイト。原題:RABBIT HOLE。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、マイルズ・テラー、ダイア ...
2011年11月14日(Mon) 23:54
「ラビット・ホール」
優れた人間ドラマ。
2011年11月15日(Tue) 00:24
高度な表現力。『ラビット・ホール』
幼い息子を交通事故で亡くした夫婦の物語です。
2011年11月15日(Tue) 10:58
ラビット・ホール・・・・・評価額1600円
ウサギ穴の先にあるのは、不思議の国?それとも・・・ 幼い息子を事故で亡くした夫婦の、喪失と再生の道程を描くヒューマンドラマ。 原作は、ピューリッツア賞に輝いたデヴィッド・リンゼイ=アベアーによ...
2011年11月15日(Tue) 13:42
この宇宙のどこかに ~『ラビット・ホール』
 RABBIT HOLE  ニューヨーク郊外の瀟洒な邸に暮らすベッカ(ニコール・キッドマン)とハウ イー(アーロン・エッカート)は、8ヶ月前、4歳になる一人息子のダニーを亡 くしていた。ある...
2011年11月15日(Tue) 20:45
ラビット・ホール
再生への方法を模索中 公式サイト http://www.rabbit-hole.jpデヴィッド・リンゼイ=アベアーの同名戯曲の映画化製作:ニコール・キッドマン監督: ジョン・キャメロン・ミッチェル 「
2011年11月17日(Thu) 11:42
ラビット・ホール(2010)◇◆RABBIT HOLE
 大きな岩のような悲しみは、やがてポケットの中の小石に変わる。 このコピー、良いですよね!! 評価:+5点=75点 ニコール・キッドマンがウディ・アレンの作品を降板して、この作品にかけたというくらい、キッドマン全身全霊な演技かも。。。。。 「ヘドウィグ...
2011年11月18日(Fri) 23:50
ラビット・ホール
 『ラビット・ホール』を日比谷のTOHOシネマズシャンテで見ました。 (1)クマネズミにとっては、久しぶりの二コール・キッドマンの主演作です〔以前、『毛皮のエロス』(2006年)とか『オーストラリア』(2008年)を見ました〕。  この映画は、4歳の愛児を交通事故で失...
2011年11月21日(Mon) 06:53
ポケットの中の石
23日のことですが、映画「ラビット・ホール」を鑑賞しました。 息子を交通事故で失った夫婦の物語 子どもを失う苦悩・・・ 設定としては ありがちだが 静に丁寧に描いている 出演者 皆 いい演技をしているが ニコール・キッドマンの微妙な不安定加減が非常に巧い ニコ...
2011年11月28日(Mon) 21:58
ラビット・ホール
一人息子を交通事故で失ってしまったハウイーとベッカ。同じ悲しみの中で生きて行く2人だったが、次第に彼らの間には溝が出来てしまう。
2011年12月08日(Thu) 10:11
映画『ラビット・ホール』を観て
11-69.ラビット・ホール■原題:Rabbit Hole■製作年・国:2010年、アメリカ■上映時間:92分■字幕:太田直子■鑑賞日:11月6日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■料金:1,800円□監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル□脚本:デヴィッド・リンゼイ=ア?...
2011年12月18日(Sun) 21:57
ラビット・ホール
“あたたかでやわらかな感動でした” 2011年12月28日 新潟・市民映画館シネ・ウインドにて鑑賞(1月13日まで上映) おすすめ度:★★★★★ 息子を亡くした悲しみというのは共通しているのに、ベッカは自分と対峙の仕方が違う人々に苛立ちヒステリックになっていきます。...
2012年01月10日(Tue) 08:55
ラビット・ホール
ニコールがイッテる。凄い。
2012年02月12日(Sun) 12:02
ラビット・ホール
DVDでの観賞 解説 わが子の命を奪った少年との交流を通して悲しみを乗り越えようとする 母親を、ニコール・キッドマンが演じる感動の人間ドラマ。 ピューリッツァー賞受賞の戯曲を基に劇作家のデヴィッド・リンゼイ= アベアー自身が脚本を手掛け、『ヘドウィ?...
2012年04月22日(Sun) 22:08
ラビット・ホール  Rabbit Hole
ニコール・キッドマンが初プロデュース、 アカデミー賞とゴールデングローブ賞両方で主演女優賞にノミネートされた作品です。 映画館での上映をのがし、DVD発売を待っておりました。 「エリン・ブロコビッチ」や「幸せのレシピ」「ダークナイト」のアーロン・エッカー...
2012年04月30日(Mon) 00:18