約束の葡萄畑~あるワイン醸造家の物語
2010, 11. 27 (Sat) 19:12
1808年、ブルゴーニュ地方。
若き葡萄農家、ソブラン(ジェレミー・レニエ)は、最高のビンテージワインを造る醸造家となる夢を持っていた。
ある日、天使ザス(ギャスパー・ウリエル)がソブランの前に現われ、葡萄の苗木をプレゼントする。
ザスは年に一度の再会を条件に、ソブランにワイン造りの助言をする…。
最高のワイン造りに情熱を燃やす一人の男が、突然現われた天使との交流を通じてワイン造りの奥義を学び、至高のワインへ辿り着くまでを描くヒューマンドラマ。
2010年 10/23公開 フランス/ニュージーランド映画
監督 ニキ・カーロ
「クジラ島の少女」「スタンドアップ」と、これまで女性を描いてきたニキ・カーロですが、こちらの作品は、醸造家男性の人生をワイン造りに投影して描いた物語となっています。
小作人のままで終りたくないソブランは、自分のワインを造りたいと考えています。
ある夜、天使ザス(ギャスパー・ウリエル)と出会ったソブランは、ワイン造りのヒントを教えられ、毎年この場所で会おうと約束します。
ザスの助言通り、セレスト(ケイシャ・キャッスル=ヒューズ)と結婚することも出来たソブランは、ワイン造りのお金を稼ぐため、年老いた父と身重の妻を残しナポレオン軍へ参加し、過酷な環境からやっとの思いで生還します。
天使が舞い降りて来たのは、神に愛されたからと信じ込んでいたソブランは、どうしてピンチを救わなかったのかとザスを責めます。
苦しみがあるから喜びがあるのだと、ワイン造りを人生に喩えるザスから苗木をもらったソブランは、最高のワイン造りへと情熱を注いでいきます。

天職と信じ全うする物語は珍しくはないですが、ワイン造り=人生というテーマだけで描かず、天使がキーポイントになって登場するので、平凡な仕上がりの作品ではありません。
天使と言えどもザスは堕天使であり、上にも下にも属さない、中間層に存在するようです。
彼は哲学的なウンチクも並べもますし、中性的で同性愛を思わせる描写も多々あります。
曖昧で混沌として理解しにくいものがあるので、精神論や影響力を持つ天使をどう受け止めるかで感想が分かれそうな気がします。
「ハンニバル・ライジング」以来のギャスパー・ウリエルの公開作品なので、個人的には彼の天使姿や官能的な怪しい魅力を楽しみましたが、ソブランとザスの結びつきが魂の関係であるのか、必然的に呼び合ったのか、どちらにしてもソブランに取っては大きな原動力であったので、誰の眼からも見える実体ではなく、幻想的な存在にした方が良かったんじゃないのかと残念でした。
ましてや*ネタバレ
天使の羽を落として人間になる…って、ダメポイントでした。
最後までファンタジー的に天使のままでいて欲しかったです。
ソブランの妻セレストは、一見は控えめですが、肉食系女子で本能のままな女性です。
愛し合う二人は所構わず求め合いますけど、葡萄踏みながらは止めて頂きたい(苦笑)
情熱的に夫を愛し、子供を育てるセレストは、オーロラと夫の関係に疑いを持ちますが、ある時、まるで逢瀬のようなザスとソブランを目撃し精神を病んでしまいます。
物静かで多くを語りませんが、秘めたものをたくさん抱えていました。
「クジラ島の少女」では11歳だったケイシャ・キャッスル=ヒューズが、17歳で出産した娘ちゃんも出演しています。
撮影当時19歳だったそうですが、お見事な脱ぎっぷりと濡れ場です。
子役の成長は早い(苦笑)

伯爵の死後、シャトーを引き継いだ姪の男爵夫人オーロラ(ヴェラ・ファーミガ)。
高貴な美しさと知性を兼ね備えるオーロラとソブランは、お互い男女を意識しながらも最高のワインを目指す者同士として一線を越えようとはしません。
ソブランに目隠しされたオーロラが、頭ではなく感性でワインを知るのだと教えられ、初めてソブランを理解することができました。
肉体関係がなくても官能を刺激されたようなオーロラが印象に残ります。
こちらの大人の関係が良かったのに、ソブランの娘の結婚式の夜、何気に結ばれちゃうんですよね…。
長年、そうしないで来たのだから、最後まで貫いて欲しかったな~妻は精神病んでるし、何か、嫌だなぁ~と思っちゃいました。
今回はコスプレのヴェラ・ファーミガですが、どこかしらケイト・ブランシェットを思わせる雰囲気がありまして、彼女も作品ごとに化ける上手い女優さんだとまたまた感心させられました。
こちらも美しい裸体をご披露しています。
男性主役の作品ですが、二人の女性の内外の強さや美しさも、ニキ・カーロはしっかりと描いています。

三人三様の愛を受けたジェレミー・レニエ。
モテキャラ顔とは思えなかったですが、特殊メークで年齢を重ねるごと、内面からにじみ出る自信や喪失感などの感情表現が行き届いていたと思います。
ワイン造りで重要なのは、土壌、苗木、努力。
作り手が人生の浮き沈みを経験すればするほど、熟成された深みのある味わいになると言う。
戦争や子供の死、満足いく品の完成、病害による葡萄の全滅…。
ソブランが経験した成功や挫折は、もしかしたら特別波乱万丈なものではなく、普遍的であるように感じました。
天使と出会い、妻とワインの理解者を得る。
この3人と出会い、何よりブルゴーニュの地に生まれワインに出会ったこと。
原題の「ワイン製造業者の幸運」通り、ラッキーな人生だと思いました。
葡萄畑の広がる風景や、植物や昆虫、人々の生活様式、衣装…。
何気ないひとつひとつに雰囲気がある美しい映像でした。
苗木の新芽なんて、実に繊細でいとおしさを感じます。

悲しみがあるから喜びがあり、不作があるから豊作がある。
人生は良い時があれば悪い時もあり、特に悪い時は、必ず良い時が来ると信じて、誰もが頑張っていくものです。
時間や自然の恵みの助けを借り、希望を失わず、悲しみも喜びも経験することが自分の成長であり、人間らしい人生を送れると言うこと。
中間層は私達が暮らす現実であり、そんなメッセージを感じ取ることが出来る作品でした。
コメント
KLY
No title
そうそうヴェラがケイトに似てますよね。わたしもこの2人ってこんなににてたっけ?って改めて思いましたよ。普通私はこの手の天使とか出てくるとドン引きしちゃうほうなんですが、何故か今回は平気でした。やっぱりキリスト教とワインの親和性が高いからかもしれません。
オリーブリー
KLYさんへ
こんばんは。
今回、時代モノだったので、特にケイトに似てると思いました。
ヴェラもエリザベスできるかも〜笑(*^-゚)vィェィ♪
彼女も演技もジャンルも幅広いですね〜!
ワインはイエスの血を表してますから、天使の参加は物語に違和感があるものではなかったですね。
ただ、好みで言うと最後まで天使のままでいて欲しかったです(;^_^A アセアセ・・・
latifa
2つまとめて
オリーブリーさん、こんにちは!
グッドドクターの記事、笑ったー^^
2.8って~(^^ゞ 解るー!
私も3点には届かないけど、2.5だと、ちょっと可哀想か?という処だったから。
>白衣、ネクタイ、スーツ姿のオーリーは新鮮!
確かに! そういう姿に、ちょっと弱いのだー
で、こちら。
感想や思う処が同じで、そうそう!そうだよねー!って一人でうなずいちゃう処多数☆
ギャスパー君の天使は一見の価値があったけど、でも、どなたかが、天使デカっ!って書かれていて、確かに・・・と、後から笑ったわー。
私もみんなが見えるんじゃなくて、主人公の彼にしか見えない幻想・・・みたいな方が良かったな。
まさかの、翼を取って人間化?には、もうびっくり。
あと、オリーブリーさんも、あの2人が結局一線を越えちゃう事に、ちょっとがっかりしてるのを見て、おお~こんなところも同じだわー!って嬉しくなっちゃった。
なんか、ちょっと奥さんが不憫だったよね・・・
オリーブリー
latifaさんへ
こんにちは~。
100%ウリエル君狙い(笑)
あっ、ヴェラさまも少し(*^-゚)vィェィ♪
>天使デカっ!
爆!!
確かに!!
あの展開がどーしてもね~~~。
あとさっ、同性愛と匂わすならね、美男同士にしてもらわないと(苦笑)
それか、思いっきり笑わすかでしょ(^_^;)
ジェレミー・レニエって、猿顔なんだもん。
男女のラブものでも、ダメよ、この人(汗)
せっかくのファンタジー要素が台無しだったな~~まあ監督は最初からファンタジーとはしてなかったんだろうけど。
「グッド・ドクター」
一言。
イクメンより役者を頑張れぇ~~~!!!ヽ(^◇^*)/
トラックバック
- この記事へのトラックバック
-
- 約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語
- 19世紀のフランスはブルゴーニュ地方を舞台に、最高のワインを生み出すことに生涯を費やした一人の男の半生を描く。主演に『夏時間の庭』のジェレミー・レニエ、共演に『ハンニバル・ライジング』のキャスパー・ウリエル、『マイレージ・マイライフ』のヴェラ・ファーミ...
- 2010.11.27 (Sat) 21:05 | LOVE Cinemas 調布
- この記事へのトラックバック
-
- 約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語
- 監督・脚本: ニキ・カーロ
- 2010.11.27 (Sat) 21:46 | あーうぃ だにぇっと
- この記事へのトラックバック
-
- 「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」
- 「The Vintner's Luck」 2009 フランス/ニュージーランド 農夫ソブランに「ある子供/2005」「夏時間の庭/2008」「ロルナの祈り/2008」のジェレミー・レニエ。 天使ザスに「パリ、ジュテーム/2006」のギャスパー・ウリエル。 男爵未亡人オーロラに「こわれゆく世...
- 2010.11.28 (Sun) 00:13 | ヨーロッパ映画を観よう!
- この記事へのトラックバック
-
- 約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語 (試写会)
- ワインの味は造り手そのもの公式サイト http://yakusoku-wine.com10月23日公開原作: “The Vintner's Luck”(エリザベス・ノックス著)監督: ニキ・カーロ 「
- 2010.11.28 (Sun) 14:22 | 風に吹かれて
- この記事へのトラックバック
-
- 『約束の葡萄畑あるワイン醸造家の物語』(200...
- 原題:THEVINTNER'SLUCK監督・脚本:ニキ・カーロ原作:エリザベス・ノックス脚本:ジョーン・シュッケル出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ヴェラ・ファミーガ、ケイシ...
- 2010.11.28 (Sun) 19:04 | NiceOne!!
- この記事へのトラックバック
-
- 約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語
- 19世紀 ブルゴーニュ、 そこは天使が舞い降りる丘。 人生をワイン造りになぞらえた芳醇な愛の物語。 製作国 フランス/ニュージーランド 原作 エリザベス・ノックス 上映時...
- 2010.11.28 (Sun) 21:17 | to Heart
- この記事へのトラックバック
-
- 約束の葡萄畑〜あるワイン醸造家の物語
- 予告編を見たときから、神秘的な大河ドラマ風で、ワタクシの好きなヴェラファーミガが出演しているとあって、楽しみにしていた作品だった。19世紀のフランス、ブルゴーニュ地...
- 2010.12.02 (Thu) 13:06 | シネマ日記
- この記事へのトラックバック
-
- 「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」感想
- クジラの島の少女、スタンドアップのニキ・カーロ 監督作品ということもあって、レンタル。
- 2012.10.16 (Tue) 17:16 | ポコアポコヤ 映画倉庫