心のままに映画の風景

備忘録として更新します。コメントありがとうございました。
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冬の小鳥

A BRAND NEW LIFE

1975年、韓国。
9歳のジニ(キム・セロン)は、大好きな父(ソル・ギョング)に連れられ、ソウル郊外にあるカトリックの児童養護施設の門をくぐる。
必ず父が迎えに来てくれると信じるジニは、周囲に馴染むことを頑なに拒み反発を繰り返すが…。


父親に置き去りにされた事実を受け入れられない少女の再生を描く。
監督は、自身も養子として韓国から渡仏した経験を持つ新星のウニー・ルコント。

2010年 10/9公開 韓国/フランス映画
監督 ウニー・ルコント

受け入れた時から未来は広がる{★★★★4/5}

父に捨てられた事実を認めたくないジニは、養護施設の暮らしになじもうとせず反抗を繰り返す。
心を閉ざすジニを気にかけ、何かと面倒を見る先輩のスッキは、アメリカに行く夢を持ち、養子縁組に前向きで積極的。
占いを楽しんだりする女の子らしい日常はごく当たり前のようだが、彼女たちのほとんどが養子にもらわれ施設を去ることになる。
必ず父親が迎えに来るという想いが強いジニには、養子になって新しい家族に引き取られる意味を理解することが出来ない。

70年代の韓国では朝鮮戦争後に米軍兵士との戦争孤児が多く、施設に引き取られ海外養子を行なっていたそうで、80年代には「孤児輸出問題」として社会問題にもなったそうです。
トリノ・オリンピックで男子モーグル銅メダルのドーソン選手が、児童養護施設から米国人夫婦に養子として引き取られ、「五輪に出れば親が名乗り出てくるかも」と言うエピソードを思い出しました。
こちらの作品のジニは、父親の再婚と赤ちゃんの存在で邪魔者になってしまったような境遇ですが、韓国のカトリック系児童養護施設からフランス人に養女として引き取られたウニー・ルコント監督の自伝的物語がベースになり、自分が置かれた境遇を頑なに拒み続ける少女が、次第に現状を受け止めていく姿がじっくりと描かれていました。

施設の大人たちの対応が印象的です。
悪いことをしたら叱りはしますが、多くを語らずお説教もせず、自主性を持たす方針のようです。
このような境遇の子供達が幸せになるためには、強くなくてはならない事、希望を捨てない事を自らの力で知ることが大切なのでしょう。
足が不自由なため家政婦代わりとしての養子話しか来ない年長イェシンの恋など、ジニの成長に影響を与えただろう出来事を別の視点で絡ませるストーリーも良かったです。
全体的にくすんだ色彩と冷たい空気感がする施設でのシーンがほとんどですが、逆に、ここから旅立てば明るい未来があるのではないかと予感させられました。
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自分は孤児ではない、父が迎えに来ると反抗しながらも、スッキには心を開いていくジニ。
ある日、ジニとスッキは親鳥からはぐれ怪我をした小鳥を見つけ、こっそりと介抱します。
しかし、あえなく弱った小鳥は死んでしまい、一緒に養子になろうと言ったスッキは一人で行ってしまい、父親は既に引越し何処に行ったか分からないと院長先生に教えられ、ジニの中で今まで持ち続けてきた希望がハラハラと崩れ去ってしまいます。

子供視点の作品なので、大人目線からは視野や物事の捉え方に先の予測はつき、苛酷だけれど運命をどうか受け入れて欲しいと願わずにはいられません。
9歳の少女に取ってこの上ない理不尽な出来事ですが、もうどうしようもならない事を拒み続けても何も変わることがない事、そうやって誰もが現実を受け入れ大人になっていく事を分かって欲しいと。

小鳥を埋めた土を掘り返し、更に大きな穴を掘り続け、親鳥からはぐれて死んでしまった小鳥が自分の分身であったかのようにジニは自らを埋めようとしました。
暫くして顔に掛けた土を払いのけ、宙を見つめるジニ。
視線を落とすと、誰も見ていないけれどそこにはマリア像が立っている。
この時、ジニは悲しみと絶望を乗り越え父と決別し、運命を受け入れる覚悟ができたのだと感じました。

施設を後にする友達の為に、これまで何度も唄った曲に見送られ、ジニはフランス人の養父母の下に旅立つことになります。
いつも険しい表情のジニが見せた久しぶりの笑顔の写真。
到着ゲートから出てくる不安そうなジニでしたが、迎えに来ている養父母から、これからのジニの人生にたくさんの選択が開かれるのではないかと感じることが出来ました。
オープニングとラストのジニが唄う歌詞に涙が溢れました。

ジニを演じたキム・セロンは、女の子らしい可愛い顔立ちの中に、意志の強さやキツさがあって、感情表現などお見事なお芝居だったと思います。
どこか幼少の高橋かおりに似てるような…。
イェシンを演じたのは「グエムル 漢江の怪物」のコ・アソン。
こちらもお見事です。
足が不自由な役柄なので、歩き方とか大変だったのではないかな。
韓国の子役さんはレベルが高いですね。

特別な出来事は起こりませんが、生きるために自分とどう向き合うか…。
改めて考えさせられる秀作でした。

Comment

あれま
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コ・アソンちゃんだったんだ。何だか偉く大人びてしまって解らなかったですよ。このぐらいの年齢の子って成長早いですしねぇ。
キム・セロンちゃんはウォンビンとの新作もヒットしているんだとか。来年ぐらいにならないと無理かな…。
2010年11月02日(Tue) 23:51
キム・セロン。
編集
オリーブリーさん、こんばんは。

>悪いことをしたら叱りはしますが、多くを語らずお説教もせず、自主性を持たす方針のようです。

頭ごなしに叱りつけるのではなく、
ムシャクシャするなら、布団を叩くように言っていた場面がありましたね。
人間誰しも苛立つ時はあるけど、
人に迷惑を書けない解消の仕方をするように教えていたのでしょうね。

確かに、キム・セロンは子役時代の高橋かおりに雰囲気が似ていますね。
あと、10代の頃の仙道敦子を少し思い出したりもしましたよ。
2010年11月03日(Wed) 19:45
KLYさんへ
編集
こんばんは。

はい〜私も全く分からないのですが、「グエムル〜」の彼女だったそうです。
つい最近、WOWOWで観たばかりだったのに、女の子は成長早い?(笑)
すっかりお姉さんでしたね。

キム・セロンとウォンビンの新作もファンサイトで話題になってますね。
こちらでの公開が待たれます。
2010年11月06日(Sat) 00:00
BCさんへ
編集
こんにちは。

ああ〜仙道敦子にも似てますね〜目元とか意思の強い表情とか。

受け入れる側の対応は興味がありました。
出来るだけ現実を見て、少しだけ早く大人にならなければならないことを自分で気づかせるような方針なのかな〜と思いました。
あのお手伝い(?)の方、ぶっきらぼうのようで温かい人でしたよね。
沢山の子供を送った経験者なのでしょうね。
2010年11月07日(Sun) 11:51
キム・セロンちゃん
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今晩は☆彡
こちらでもようやく公開されました。
セロンちゃんが本当にジニじゃないの?
と思うくらい、重なって見えました。
ドクターから質問され、涙しながら、話すシーン
がとても印象に残りました。
あのお手伝いの方は寮母さんだそうで、、、。
あの俳優さんは、パク・チャヌク作品の常連さん
だそうです。最近ではあの「母なる証明」にも
出演していたようですが、、、。
2010年12月20日(Mon) 01:06
mezzotintさんへ
編集
こんにちは〜お返事が遅れてすみませんでしたペコリ(o_ _)o))

>セロンちゃんが本当にジニじゃないの? と思うくらい、重なって見えました。

そうでした!
ナチュラルな喜怒哀楽が、演技してるとは思えないくらい…。
どこにでもいるんだね。。。恐るべし子役ちゃん(笑)

あの女優さん、「母なる証明」にも出てたの?
って、女優の顔覚えるの苦手なのに(笑)韓国の人、皆同じに見えてしまって…(滝汗)
2010年12月25日(Sat) 16:13
ありがとうございました!
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mezzotintさんと、オリーブリーさんの一押しで行きました!!ご飯づまい終わらせて、爺と婆のごちもならべて!!
いやーー、見れてよかったです。
すごかったわ。

>ここから旅立てば明るい未来があるのではないかと予感させられました。
ここですね。どうやって今の自分と折り合いをつけられるか!それを9歳の子供に託すのは辛いですが、自らの足で歩みだそうとする姿は、神々しかったです。

朝鮮戦争の影があったのですねぇ。
朝鮮戦争だと、年代的にはちょっと上の人たちで、イェシンのあたりでしょうね。
「国家代表?!」のジャンプ選手も孤児出身という設定になってましたが、それはそのスキー選手がモデルだと思いますわ。
2011年01月08日(Sat) 21:54
sakuraiさんへ
編集
こんにちは。

意地悪な時間帯(笑)出かけることができて良かったです。
せっかくなら観ておきたい作品ですものね。
って、爺様婆様のご飯まで、もしや毎日?!!
sakuraiさん、ほんと、エネルギッシュ!!
忙しい、忙しいと逃げてる自分が恥ずかしくなります(;´Д`A ```

本当は子供らしく親や周りの大人に甘えていて良い時期に、早く一歩踏み出して、と願う気持ちになるのも実に辛いですが、未来の可能性を広げるためには、少しだけ早く大人になることが良策なんですよね。
「国家代表?!」はパスしちゃったのですが、WOWOW待ちでチェック忘れないようにします。


2011年01月09日(Sun) 13:44












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