僕のピアノコンチェルト
2008, 10. 07 (Tue) 00:16

高いIQを持つ6歳のヴィトス(ファブリツィオ・ボルサーニ)は、ピアノの腕前にも才能ある天才少年。
両親のレオとヘレンは、一流ピアニストに育てるべく音楽学校に通わせる。
過剰な期待からの唯一の救いは、祖父(ブルーノ・ガンツ)と過ごしている時だけだった。
12歳となったヴィトス(テオ・ゲオルギュー)の生活は、ますます息苦しく孤独なものとなっていた。
ある日、ヴィトスはマンションから落ち怪我はなかったものの、事故の後遺症でIQもピアノの才能も普通の男の子並みになっていた。
周りになじめない天才少年が、自らの進む道を見つけていく成長物語。
彼と大人たちの関係をユーモアを交えて描くヒューマン・ドラマ。
監督は「山の焚火」「最後通告」などの名匠フレディ・M・ムーラー。


タイトルとあらすじから想像した内容を、気持ち良い位に裏切ってくれた素敵な映画でした♪
良作です!
たった6歳でシューマンの「勇敢な旗手」を弾きこなし、IQも高いヴィトスのような子供を持てば、
親なら才能に期待をかけ教育熱心になりますね。
悪影響は排除し、できるだけ質の高いものを与えたい。
小さい時は少し自慢な子供ぐらいだったのだろうけど、周りから認められたり感心されたりすれば、段々その気になってしまって欲も出てしまう。
ヴィトスのママは、そんなにバリバリの教育ママのような描き方ではないけれど、
大好きなピアノの先生もシッターさんもクビにしちゃうし、
今の彼に取って何が大切でどう伸ばしていきたいのか見えていない。

発明家のパパがある会社に認められてからどんどん裕福になっていき、
教育にもお金をかけることができて、超一流のピアノ教師の元へと連れて行かれる。
ママも高級車に乗ってまるでセレブのような雰囲気になっちゃうし、ますますヴィトスは息苦しくなっていく。
振る舞いは大人のようだけど、まだ12歳の子供。
頭脳と精神のアンバランスがあるのは当然。
そんな時に起こった事故の後遺症は、たしなめたり叱らなければならない時に、
ヴィトスの心の奥まで深い愛情持って接してこなかった両親、特に母親にツケがまわってきたかのよう…
子供の将来や幸せの為に、できるだけ才能を伸ばしてあげたいと思うのは親なら当たり前のことで、
この加減のようなものが教育の難しさなのかもしれないなぁ~。
これは客観的に見ると凄く良く解るんだけど、いざ自分の事となると見えなくなるもの。
親である人は、この辺りの事が少しは身に覚えがあるのではないかな~
例え子供が天才児でなくても(苦笑)

せっかくの才能は、親が引いた線路のミスで潰されてしまうこともあるでしょうが、
ヴィトスに取って田舎で家具工房を営む祖父の存在は、ある意味駆け込み寺のような場所であり、
癒しと人生の教訓を与えてくれる大切な支えです。
押し付けがましくないさりげないアドバイスは、大人の心にも染みてきます。
彼とおじいちゃんの関係はこの物語でとても重要で、コミカルさも日常的で自然体。
おじいちゃんも自分の息子のことだったら、余裕が持てないかもしれないけど、“祖父と孫”の距離感だからこそ成立するんだろう。
健康な普通の子になったヴィトスは、普通の学校に通い友達と自転車を乗り回し、
聞きたい音楽を聴いて週末は祖父の家でゆっくりとした生活を楽しむ。

ところがこの後の展開は、こんなウハウハな事があるなら嬉しくて仕方がない♪(笑)と思うほど、
有り得ないことなんだろうけど、ここまで上手く運ぶと観ていて小気味が良いし痛快だった。
たった12歳のヴィトスが自分で考え自分で行動したから面白い。
それにおじいちゃんのお買い物が最高!(笑)
ヴィトスは大好きな両親とおじいちゃんの力になりたかったんだろう。
何より自暴自棄などにならず、自分自身で考えて壁を乗り越えたこと、“ピアノ”と向き合うことだけではない展開の意外性も楽しめました。
おじいちゃんから息子夫婦に宛てられた手紙には、親子の愛情を感じました。
ラストにチューリッヒ室内管弦楽団と演奏されるピアノ協奏曲は、
もしかしたら子供ゆえの荒さがあるのかも知れないけどお見事でした♪

主人公ヴィトスの12歳を演じるテオ・ゲオルギューは、自身も国際的なコンクールでの優勝実績を持つ新進ピアニストで、劇中の演奏シーンも彼自身がこなしています。
劇中でもシューマン、バッハ、リスト、モーツァルトなど、すばらしいピアノ名曲を聴かせてくれます。
演技までできるなんて、素晴らしい!
彼も上手だったけど、6歳の頃のヴィトス、ファブリツィオ・ボルサーニがスゴク可愛い!
くりくりな目に生意気さと無邪気さが同居していて、とっても可愛い子でした!
祖父役を「ヒトラー ~最期の12日間~」のブルーノ・ガンツが好演。
素敵なおじいちゃんでした。
2007年 11/3公開 スイス映画
監督 フレディ・M・ムーラー
コメント
トラックバック
- この記事へのトラックバック
-
- 「僕のピアノコンチェルト」感想
- ロードショー時、とても見たかった映画。チラシを見て想像したのと、実際の映画は全然違った内容でした。3つ★半
- 2008.10.09 (Thu) 07:58 | ポコアポコヤ 映画倉庫
- この記事へのトラックバック
-
- 映画「僕のピアノコンチェルト」
- 原題:Vitus 少年とおじいさんの物語といえば「ウォルター少年と、夏の休日」を思い出す、男の子にとってリタイヤして余裕のできたおじいさんはとても親しみやすい存在〜 この映画、ただ単に現役天才ピアニスト少年が主役を演じたというだけではない、いわば少
- 2008.11.15 (Sat) 18:07 | 茸茶の想い ∞ 〜祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり〜