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ボルベール <帰郷> 

2007, 08. 24 (Fri) 21:21



ライムンダ(ペネロペ・クルス)は、夫と15歳の娘パウラ(ヨアンナ・コボ)とバルセロナで暮らしている。
ある日パウラは、失業中の父親に「本当の親ではない」とレイプされそうになり、父を刺し殺してしまう。
空き家となっていた隣のレストランの冷凍庫に、夫の死体をひとまず隠したライムンダは、
偶然近くで撮影している映画のロケ隊に頼まれ、ランチを作ることになる。
閉店したレストランは冷凍庫に秘密を隠したまま、暫く彼女の生活の糧と活気のある場所となった。

そんな時故郷では独り住まいで痴呆の伯母が亡くなり、姉のソーレ(ロラ・ドゥエニャス)だけが通夜に出かける。
何かと伯母の世話をしてくれていた隣人アウグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)から、火事で死んだはずの姉妹の母親(カルメン・マウラ)の幽霊を目撃したという噂を耳にする。
葬儀を終え自宅に戻ったソーレは、車のトランクから自分を呼ぶ声に驚く…

スペインで久しぶりにペドロ・アルモドバル監督と組んだペネロペ・クルス。
本年度アカデミー主演女優賞にノミネートされ、カンヌ映画祭では6人の女優が女優賞に輝いた作品。
325137view001.jpg

良かった!
とっても良かった!
出演の女優さん、皆さん素晴しい!
そしてペネロペは、ハリウッド映画で見せる美しさとは全く別の美しさで、力強くて生き生きとしていた。
負けず嫌いで感情的、胸やお尻を強調した洋服やメイクが情熱的なスペイン女って感じなんだけど、1日中家族のために必死で働く頑張り屋さん。
ひょんな事から30人分のランチを作り、エプロン姿で切り盛りする彼女は特に生き生きとしていて、楽しそうだった。
それこそ故郷スペインの映画で、ありのままで素の彼女を見るかのよう。

故郷ラマンチャの両親の墓参りから物語は始まります。
強風が吹く地方としても有名な場所だそうで、風力発電の大きなプロペラが幾つも連なり、緩やかに動く光景が故郷への出入り口かのように何度か映し出されます。

目が見えずボケているのに、訪ねてくる姪のために手作りお菓子を用意してる伯母さん、
隣家に住む幼馴染みの母親は、失踪して何年も戻らない。
両親は強風にあおられ火事で焼け死んでしまったけど、母は父の腕の中に抱かれたままで愛されていた。
更には正当防衛だけれど、父を殺してしまった娘とそれを隠す母親。
かなり深刻な内容で、一体、どんな展開になるんだ?と悲劇的に思わずにいられないのに、
ユーモアーに描かれていて笑いながら観ていられるんです。
そしてさり気なく希望も感じさせられて…
mn_volver01.jpg

描かれているのはすべて女性。
それぞれが悩みや秘密を抱えている。
そんなキャラクター描写がとても緻密で、個性がはっきりしていているので、考えていることも解りやすく伝わってくる。
“女”とは“母”とは“生きる”とは…子供を守るための強さや無償の愛。
そんな愛情がたくさん溢れていたと思います。
070625_volver_main.jpg

撮影の打ち上げパーティで、ライムンダは母から教わったタンゴの名曲 “ボルベールvolver” を披露。
ライムンダは母への思慕を呼び起こす。

ペネロペの歌声は、フラメンコ歌手が歌っていて実は口パクだそうだが、
数か月特訓しただけあって、殆ど違和感がなく情熱的だった。
「戦場のアリア」のダイアン・クルーガーは少し見習った方が良いと思う。

結果とすれば罪は罪だけれど、妻を泣かせ、娘にまで手を出そうなんて男の下半身に、人生を台無しにされてたまるものか!
そんな女にしか解らない苦悩を感じ、女はしたたかに生きる才能も持ってるんだから…な~んて思ってしまいました。

単館で上映館が少ないみたいですが、
私の所でも最近、街中の映画館で再演され始め、女性でイッパイでした。
是非お近くで上映があれば、ご覧になって損のない作品だと思います。

2007年 6/30公開 スペイン映画
監督 ペドロ・アルモドバル

コメント

よう

共感!

私が見たときも、観客はたくさんいました。
ラストがドラマチックじゃなくて、私は気に入ったんだけど、不満を漏らしていた人もいました。
でも女の日常って、なにがおこってもたんたんと過ぎて行くものですよね。

この映画、起こっていることは近親相姦や殺人や死体遺棄、火事、とんでもないことばかりだけど、それはフィクションだからそういう設定にしているだけ、という感じがしました。

そう言う意味では、私たちの生活も小さな事件で満ちていて、お母さんはひとつひとつ、家族のコンセンサスを取りながら地道に解決しているでしょう?

この監督、女のことがよくわかっているなあと思いました。
「オールアバウトマイマザー」もそんな感じの映画でした。

2007/08/26 (Sun) 10:02 | よう | 編集 | 返信

オリーブリー

マダムへ

観れないと諦めてたので、再演が嬉しかったです♪

確かにラストは「これで終わり?」とも思いましたが、私はこんなラストも良かったんじゃないかと思いました。
サスペンスとかじゃないし(笑)
何をどう選ぶか、決着つけるにしても時間がいるんだろうし…

>女の日常って、なにがおこってもたんたんと過ぎて行くものですよね

ほんと、そうですねえ〜先日の「リトル・チルドレン」も女の日常が感じれたけど、親や人としての生き方は、女の方が賢いのかな(苦笑)

>「オールアバウトマイマザー」
借りてきました〜また感想聞いてくださいね(^^)

2007/08/29 (Wed) 14:43 | オリーブリー | 編集 | 返信

margot2005

こんばんは!
ホントにペネロペは母国スペインもので本領発揮しますね。
女の怖い、怖いストーリーは痛快でしたわ。

2007/08/31 (Fri) 20:27 | margot2005 | 編集 | 返信

ミチ

こんばんは♪
イオンシネマでの独占上映だったのですが、観客は少なかったです(泣)
この映画を見たらペネロペちゃんには本拠地スペインで活躍して欲しいと思ったのですが、やっぱりまたハリウッド作品に出るのでしょうね。
迫力ものの美しさ&強さだと思いました。

2007/08/31 (Fri) 22:54 | ミチ | 編集 | 返信

オリーブリー

*margotさんへ

ホント、ペネロペさん、こっちの方が絶対良いと思いました。
ハリウッドではこんな彼女の魅力は出せませんよね。

女は強い、怖い?(爆)
いや、寛容なのかも…(# ̄ー ̄#)ニヤ

2007/09/03 (Mon) 15:12 | オリーブリー | 編集 | 返信

オリーブリー

*ミチさんへ

えー、ソチラではそんなのあったんですねえ〜!(同じイオンなのにぃ…)
こちらは、自宅からスンゴク遠い劇場だけで、車も電車も時間掛かるので諦めたんですよ〜街の単館での再演に小躍りしました(爆)

うん。
ペレロペさん、とっても良かった!!
それぞれの女性の立場や心情も良く描かれていて、満足でした。

観客少なかったですか…
満員だとチョット空気が重かったり(笑)ウットオシイと感じる事もありますが、
同じ場面で一斉に笑いがおこったり、良かったよね〜とか声が聞こえると一体感みたいなのは感じます。
特に女性には観て欲しいですよね♪

2007/09/03 (Mon) 15:19 | オリーブリー | 編集 | 返信

Any

オリーブリーさん、こんにちは♪
TB&コメント感謝です!

スペイン映画を久々に映画館で観ましたが、良かったですね〜
重たい題材でありながら、ペネロペが本当にイキイキして見えました。
口パクと言えど“ボルベール”を歌う表情も素晴らしくて、ココは泣けました。もう1度観たいシーンです。
ラストは、母の後姿に余韻が残ってなかなか良かったと思います。
赤を基調とした映像美や女優陣の衣装も凝ってましたね〜

2007/10/06 (Sat) 16:26 | Any | 編集 | 返信

オリーブリー

Anyさん、こんにちは〜
コメントありがとうございます!

“ボルベール”の歌はゾクゾクっとしました♪
あの口パクはかなり高得点でしょう(笑)
感動しましたよね!!

色彩も華やかで情熱的。
この作品は大好きです(^^♪

2007/10/07 (Sun) 15:46 | オリーブリー | 編集 | 返信

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