マンチェスター・バイ・ザ・シー
2017, 05. 24 (Wed) 14:40
アメリカ、ボストンの郊外で、便利屋として生計を立てるリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョー(カイル・チャンドラー)の訃報を受け、故郷の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻る。
ジョーの遺言で甥にあたる16歳のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人に指名されていたことを知ったリーは、ボストンで一緒に暮らそうと提案するが、パトリックは地元を離れることを頑なに拒む。
リーはこの町で暮らすにはあまりにも辛すぎる過去があった…。
ある悲劇をきっかけに故郷に背を向けて生きてきた孤独な男が、兄の突然の死で帰郷を余儀なくされ、過去の悲劇と向き合わざるを得なくなる悲痛な姿を綴る。
第89回アカデミー賞脚本賞受賞、ケイシー・アフレックがアカデミー主演男優賞を受賞。
2017年 5/13公開 アメリカ映画
監督 ケネス・ロナーガン
{★★★★㊤4/5}
過去の回想と今を交互に描き、それぞれの立場や経験した様々な出来事と、登場人物の複雑な内面を静かに映し出す。
何気ない日常や何気ない会話、良くも悪くもそういう地味な日常の延長にもがき苦しむのが人生かと感じる一方、悲劇がメインのお話しながら、若いパトリックを中心とした軽いユーモアが散りばめられていて、 ガールフレンドのママの胸元強調した服とかいかにもな笑いや、久しぶりの母親との再会シーンは、皆の精一杯な気まずさに苦笑いしてしまった。
父親を亡くしてもいつもと同じように過ごすパトリック、思春期独特の表面上な感情から繊細な部分が見えた時、これから現実を見る意識が芽生えていくのだろうし、最初は売ると言っていた船を修理したリーにわずかながらも再生の意志が見え始めたのは、故郷に戻り嫌でも人と触れ合うことで、いくらか過去と向き合えたのでしょう。
元妻ランディ (ミシェル・ウィリアムズ)の贖罪に深く胸を打たれた。
辛さを分かち合い支え合うはずの夫婦が、加害者と被害者になり、その時どんな修羅場であったか想像がつく。
時を経てランディの状況も心も変化したのは当然で、初めて本気でリーと向き合うことができたのかもしれない。
登場シーンは多くはないけれど、ミシェル・ウィリアムズが素晴らしかった。

重く辛く不幸な出来事だが、事情を知る周りの人達は腫物に触るかのように基本温かい。
許されない罪と自覚するリーに取っては、それも酷く辛いことであるのだろうし、唯一、罪と罰を与えた妻も赦してくれた。
「苦しくても頑張れば未来が開ける」「支え合えば必ず乗り越えられる」そんな映画に勇気や希望をもらえるけれど、乗り越えるなんて簡単に片付けられない悲劇があると痛感。
それでも親を亡くしたパトリックと慌てず急がず向き合おうとするリーの決意が見え、悲しく切ない物語に、何かしらの優しさがしみ込んでいくような作品でした。
ケイシー・アフレックは元々演技力はあるのに、いまいち、存在感が薄かったのですが、今作ではケイシー・アフレックありきの作品だと強く感じました。
伝記映画でどこまで似せるか、痩せた太った、あらゆる依存症、去年は瀕死の重症でうんうん唸ってましたけど、等身大な一般人役で受賞というのは久しぶりか珍しいのか、背負ったものは大きいけれど、人として普通に寄り添える人物像でオスカーというのは好感持てます。
何かにすがるとか、許しを請うとか、そんな甘い考えなんて一切ない男の繊細な感情や、ほんのわずかな心の回復を見事な演技で表現していて、オスカーは納得です。
全体的に淡々とした中、目の強弱や後ろ姿に魂が込められたかのようで、美しくのどかなマンチェスター・バイ・ザ・シーのロケーションとケイシー・アフレックがピッタリと収まっているようでした。
「アルビノーニのアダージョ」が流れる中で明かされる過去の悲劇はより一層重く辛くのしかかりました。
*自分の命の期限、息子と弟の将来、兄ジョーの無償の愛を感じた。
過去の回想と今を交互に描き、それぞれの立場や経験した様々な出来事と、登場人物の複雑な内面を静かに映し出す。
何気ない日常や何気ない会話、良くも悪くもそういう地味な日常の延長にもがき苦しむのが人生かと感じる一方、悲劇がメインのお話しながら、若いパトリックを中心とした軽いユーモアが散りばめられていて、 ガールフレンドのママの胸元強調した服とかいかにもな笑いや、久しぶりの母親との再会シーンは、皆の精一杯な気まずさに苦笑いしてしまった。
父親を亡くしてもいつもと同じように過ごすパトリック、思春期独特の表面上な感情から繊細な部分が見えた時、これから現実を見る意識が芽生えていくのだろうし、最初は売ると言っていた船を修理したリーにわずかながらも再生の意志が見え始めたのは、故郷に戻り嫌でも人と触れ合うことで、いくらか過去と向き合えたのでしょう。
元妻ランディ (ミシェル・ウィリアムズ)の贖罪に深く胸を打たれた。
辛さを分かち合い支え合うはずの夫婦が、加害者と被害者になり、その時どんな修羅場であったか想像がつく。
時を経てランディの状況も心も変化したのは当然で、初めて本気でリーと向き合うことができたのかもしれない。
登場シーンは多くはないけれど、ミシェル・ウィリアムズが素晴らしかった。

重く辛く不幸な出来事だが、事情を知る周りの人達は腫物に触るかのように基本温かい。
許されない罪と自覚するリーに取っては、それも酷く辛いことであるのだろうし、唯一、罪と罰を与えた妻も赦してくれた。
「苦しくても頑張れば未来が開ける」「支え合えば必ず乗り越えられる」そんな映画に勇気や希望をもらえるけれど、乗り越えるなんて簡単に片付けられない悲劇があると痛感。
それでも親を亡くしたパトリックと慌てず急がず向き合おうとするリーの決意が見え、悲しく切ない物語に、何かしらの優しさがしみ込んでいくような作品でした。
ケイシー・アフレックは元々演技力はあるのに、いまいち、存在感が薄かったのですが、今作ではケイシー・アフレックありきの作品だと強く感じました。
伝記映画でどこまで似せるか、痩せた太った、あらゆる依存症、去年は瀕死の重症でうんうん唸ってましたけど、等身大な一般人役で受賞というのは久しぶりか珍しいのか、背負ったものは大きいけれど、人として普通に寄り添える人物像でオスカーというのは好感持てます。
何かにすがるとか、許しを請うとか、そんな甘い考えなんて一切ない男の繊細な感情や、ほんのわずかな心の回復を見事な演技で表現していて、オスカーは納得です。
全体的に淡々とした中、目の強弱や後ろ姿に魂が込められたかのようで、美しくのどかなマンチェスター・バイ・ザ・シーのロケーションとケイシー・アフレックがピッタリと収まっているようでした。
「アルビノーニのアダージョ」が流れる中で明かされる過去の悲劇はより一層重く辛くのしかかりました。
*自分の命の期限、息子と弟の将来、兄ジョーの無償の愛を感じた。
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ジョニーA
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