アルバート氏の人生
2013, 01. 24 (Thu) 23:20
19世紀のアイルランド。
ダブリンにあるホテルのベテラン・ウェイター、アルバート・ノッブス(グレン・クローズ)は、人付き合いを避け、固い殻に閉じこもる生活を送っていた。
誰にも明かすことのできない秘密があるアルバートは、ホテルの改装工事にやって来た塗装業者ヒューバート・ペイジ(ジャネット・マクティア)と出会い、変化が訪れることになるが…。
生計を立てるために男性として生きざるを得なかった孤独な女性の苦悩と哀しみを描く。
グレン・クローズが、かつてオフ・ブロードウェイで主演した舞台を自らの脚本、製作、主演で映画化したドラマ。
第84回アカデミー賞では、メイクアップ賞、グレン・クローズが主演女優賞、ジャネット・マクティアが助演女優賞にノミネート。
2013年 1/18公開 アイルランド映画
監督 ロドリゴ・ガルシア
昨年のアカデミー賞3部門でノミネートされた作品。
約1年待ち、やっと公開されました。
時々、笑いを誘うものの、派手さはなく、決して軽いお話でもありませんが、女の人生を考えさせられる作品でした。
主演女優賞では、結果的にメリル・ストリープやミシェル・ウィリアムズの影に隠れてしまったけれど、男性として生きる女性を演じたグレン・クローズは素晴らしく、個人的にはオスカーあげても良かったのにと思いました。
長年に渡り、この役に拘り続けた彼女の思い入れの強さを感じます。
激しくて怖い女のイメージが払拭されました(笑)
また、助演にノミネートされたジャネット・マクティアも素晴らしい存在感で、見事な男っぷりでした(惚れそう♪)
わたしは初めて観る女優さんと思うけど、背が高くて勢いがあって、何から何まで男らしい!
ドレス着たシーンは、女装した男にしか見えません(でも爆乳です~笑)

頑なで物静かなアルバートは、細かい気配りで黙々と仕事をこなし、客や仲間から厚い信頼を寄せている。
品のある所作を心がけ、時に純粋すぎて浮世離れしたような一面も見せる。
ある日、仕事に来た塗装業のペイジを一晩だけ部屋に泊めることになったアルバートは、ふとしたことから、女であることをペイジに知られてしまう。
秘密にして欲しいと頼むアルバートに、ペイジは口外しないと約束した。
それでも過敏になるアルバートに向かって、ペイジはシャツのボタンを外し胸を見せる。
ペイジもまた同じように性を偽り、普通に結婚して妻と暮らしていると話す。

アルバートの同僚であるメイドのヘレン・ドウズ(ミア・ワシコウスカ)とジョー・マキンス(アーロン・ジョンソン)は恋人関係になる。
ジョーは、ヘレンに気のあるアルバートを利用して、渡米の資金を貢がせようと企んでいた。
しかし、ヘレンから妊娠したと告げられたジョーは、自分ひとりで渡米すると言う…。

アルバートが男として生きていく決意をした過去や、ヘレンに求婚することは語られても、同性愛者かどうかは明白にはされません。
おそらくアルバート自身も分かっていなかったかのではないだろうか。
恋愛感情というより、世間と一線をおいてきた自分でも、ペイジのようにパートナーの存在があれば、幸せになれるのだと思っただけなのかもしれない。
そんなのどちらにしてもヘレンに拒絶されるに違いないのに、どうにかならないのだろうかと、ただスクリーンを見つめるだけ。
堂々としているペイジに比べ、アルバートはとてもナイーブでいつも心に怯えを抱えているよう。
ドレスをまとった時、ふと蘇った女の記憶や、夢や希望の妄想がせつなくてはかない。
ラストには新たな希望が見えるものの、ホロラン医師(ブレンダン・グリーソン)がアルバートの真実を内緒にしていてくれたならと残念でたまらなかった。

登場人物の性質描写が見事で、守銭奴なホテルのオーナー、人の良さそうな医師、能無しアンポンタンのジョー、恋に盲目なヘレン、特に、男以上に男らしいペイジは最高でした!
常連客の子爵にジョナサン・リース=マイヤース。
何だかお久しぶりで、こんなちょい役が勿体無いけど、金持ちの道楽者や権力だけのいやらしい人物を見せることで、19世紀の貧困、階級社会との対比が物語を牽引していきます。
アルバートとペイジを黙ってジィーーーと見つめる子供とかも面白い(笑)
アーロン・ジョンソンも上手だった~どんな役も無難にこなす。
渡米したジョーは、おそらく「ギャング・オブ・ニューヨーク」か(苦笑)
この物語に登場したどの男より、アルバート氏は品格と良識があり、真の愛情を持つ男性でした。
そして自分らしく生きようと決意した時、一番孤独な男性になったのかもしれません。
コメント
こに
こんにちは。
トラバありがとうございました。
素敵な映画でした。
粗野なジョーには辟易しましたが、生れや育ちが彼をそんな人間にしてしまったのでしょうね。
ヒューバートはカッコ良かったですね~。
>ホロラン医師(ブレンダン・グリーソン)がアルバートの真実を内緒にしていてくれたならと残念でたまらなかった。
私も、そう思いました!
オリーブリー
こにさんへ
こんにちは~こちらこそ、ありがとうございます。
グレン・クローズの佇まいと言うのか、それが全体から伝わってくるような作品の雰囲気に魅了されました。
存在感あるジャネット・マクティアも良かったです。
貧しさの中で必死で生きていこうとしても、差別によっていつしかジョーのように腐った人間を生み出しているのでしょうね。
ホロラン医師もホテルを去ったようでしたし、もしかしたら後悔しているのかしら。。。
そうあって欲しいですね。
小米花
今晩は~
コメント、ありがとうございました。
いい「映画でしたね~。
>激しくて怖い女のイメージが払拭されました
ホントそうですね(笑)。
私、その怖い彼女が好きですが(笑)。
いつ、爆発するのかってドキドキしてましたが、
見事抑えきってました。
ペイジ、私も惚れそうです。
最後まで女優かどうか分かりませんでした。
胸は作り物~?って思ったので・・・(笑)。
オリーブリー
小米花さんへ
こんばんは~こちらこそ、いつもありがとうございます。
地味だけど良い映画でしたね。
グレン・クローズの最後まで静かで抑えた演技に魅了されました。
女であり男である生き様は、タイプは違えど、どちらの女性も完璧な成りきりで見事だったと思います。
女性、ジャネット・マクティアの映画が観てみたいです(笑)
mezzotint
遅くなりました!
こんにちは。
地味でしたが、なかなか良かったです。
そうそうおっしゃるようにジャネットさん演じるヒューバートが
グレン演じるアルバートよりインパクトあったと思います。
わあ~!間違ってすみません。アカデミー昨年だったんですね。
失礼しました(汗)
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