秀作まとめて⑵(WOWOW)
2015, 09. 05 (Sat) 14:04
「ワン チャンス」2014年公開

子供時代から冴えない人生を送るポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)は、歌うことが大好きで、オペラ歌手になる夢を持ちながらもケータイ・ショップの店員に甘んじる日々。
そんな彼にもようやく春が訪れ、メールで知り合った気だての良い女性、ジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)と恋人同士になる。
彼女の叱咤激励が功を奏し、ヴェネチアへのオペラ留学が実現、憧れのパヴァロッティの前で歌う機会にも恵まれたのだったが…。
*イギリスの人気オーディション番組での優勝をきっかけに、世界的オペラ歌手となったポール・ポッツの波瀾万丈の半生を映画化した音楽伝記ドラマ。
「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル監督が、ユーモアと心温まるタッチで描き、劇中の歌は、すべてポール・ポッツ自身が実際に歌っている。
ジュリー・ウォルターズとコルム・ミーニイがポールの両親を、「パイレーツ・オブ・カリビアン」目玉の海賊、マッケンジー・クルックが携帯電話ショップの店長でポールの親友を演じる。
ワンチャンスを摘まむまでの二転三転が、映像と音楽に乗せ軽妙に展開していくので、気の毒で仕方ないことなのになんだか可笑しい(笑)
周囲の人達や妻の愛に支えられ夢を叶えるサクセス・ストーリーで、結末は分かっていても、再三の運の悪さで紆余曲折があると自然に応援したくなるし、最後はとっても清々しい気持ちになる。
体格や顔つきが似ているジェームズ・コーデン、ポール・ポッツ本人の吹き替えであってもレッスンはしたそうで、本当に歌っているような迫力があったし、冴えないっぷりにクスッと笑わされます。
両親もユニークというか(笑)、あまり良好ではなかった父親と息子の関係は心温まります。
息子は父親に認められるのが一番嬉しいのではないでしょうか。
そして、とにかく、デキた妻が本当に素晴らしい!
寛容で優しく、どんな時も夫を信じて支え続ける。
ポールの成功は、彼女なしでは有り得なかったかも。
才能に恵まれていても自分ひとりの力だけではなく、こういう素敵な人達の支えがあって掴めるものなんでしょうね。
そう思わせる主人公以外のキャラクター演出も上手でした。
自分には何の才能もないけれど、もし、そんな人と巡り合うことでもあったら、そういう周りの人間になりたいな(笑)
★4.7
「誰よりも狙われた男」2014年公開

ドイツの港湾都市ハンブルク。
同国の諜報機関によって、イスラム過激派として国際指名手配されているチェチェン人イッサ・カルポフ(グリゴリー・ドブリギン)の密入国が確認される。
テロ対策チームを率いるギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、さらなる大物を狙うため彼を泳がすことにする。
一方、親切なトルコ人親子に匿われ政治亡命を希望するイッサを、人権団体の若手女性弁護士アナベル・リヒター(レイチェル・マクアダムス)が親身になってサポートしていく。
イッサは、アナベルを介して銀行家のトミー・ブルー(ウィレム・デフォー)と接触を図る。
CIAも介入してくる中、アナベルとトミーの協力を強引に取り付けたバッハマンは、ある計画へと突き進むが…。
*ジョン・ル・カレの同名スパイ小説を「コントロール」「ラスト・ターゲット」のアントン・コルベイン監督が映画化。
国際指名手配の青年を巡り、ドイツの諜報員はじめ様々な組織や個人の思惑が交錯していくスパイ映画。
イーサン・ハントやジェームズ・ボンドのような派手なアクショ、ドンパチは一切ない、地味な作業と手間を掛け、巧みに練られた作戦で心理戦や頭脳戦を繰り広げる濃密なドラマだった。
ジョン・ル・カレの小説、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を映画化した「裏切りのサーカス」同様、個人や人間関係をメインとした緊迫感のある奥深い内容で、尾行や盗聴などのスパイ活動をさりげなくもスリリングに見せる。
自転車で走行するアナベルを拉致する場面とか、地味ながらも完璧。
「世界を平和にする」目的は同じでも、バッハマンとCIAの理論ややり方は真逆であって、苦労しながらも順調に進んだはずの作戦が、まさかの展開になってしまったラストには、敗北感や喪失感でいっぱいになるけど、現実、こういうことが多々あるのだろうと怖さも残る。
バッハマンの仲間には、「東ベルリンから来た女」のイルナ・フライ、「ラッシュ/プライドと友情」のダニエル・ブリュール、CIA諜報員にロビン・ライト、レイチェル・マクアダムスとウィレム・デフォーがバッハマンの協力者とさせられてしまう民間人を演じ、フィリップ・シーモア・ホフマンの存在感と安定ある重厚な芝居が物語を引っ張り続ける。
2014年にオーバードースで急死し、最後の主演作となってしまった。
本当に残念。
★4.8
「チョコレートドーナツ」2014年公開

1979年、アメリカのカリフォルニア。
シンガーを夢見ながらショーパブでダンサーとして日銭を稼いで暮らすゲイのルディ(アラン・カミング)は、ゲイであることを隠して生きる検事局の男性ポール(ギャレット・ディラハント)と一目惚れ、2人はたちまち恋に落ちる。
ある日、ルディのアパートの隣の部屋に住むダウン症の少年マルコの母親が、薬物所持で逮捕されたため、マルコは強制的に施設に送られた。
ところが施設を抜け出し家へ戻ろうとしていたマルコを見つけたルディとポールは、同性愛の恋人同士であることを伏せ、法的手続きによりマルコの監護者となり面倒を見ることにする。
3人で幸せな日々を送っていたが、ルディとポールが恋人同士であることが周囲に露見したことから、二人はマルコの監護者と認められず、マルコは再び施設に送られてしまう。
マルコを取り戻すため、二人は裁判に臨む決心をするが…。
*1970年代のアメリカを舞台に、世間の無理解と葛藤する一組のゲイ・カップルが、親に見放されたダウン症の少年と家族としての愛情と絆を育んでいくさまと、理不尽な差別や偏見に対して決然と立ち上がる姿を描いたヒューマン・ドラマ。
アラン・カミングは海外ドラマで人気だそうですが、私が知っているのは「X-MEN2」のナイトクロウラー役(素顔が判らないけど~笑)。
「キャバレー」でトニー賞受賞の実績があり、今年はトニー賞の司会もされていました。
何曲かの歌の場面は本作での見物のひとつ。
迫力があり、切々として、胸に沁みわたる見事な歌唱力です。
ルディはありのままので、母性(笑)の深い人。
辛辣なジョークも効いています。
元々真面目で善人のポールも、ルディと出会い人生の価値観が変わったと思います。
もちろん、マルコも…。
“偏見と差別“”家族と愛”
二つの普遍的なテーマで、ダウン症の少年と彼を引き取ろうとするゲイカップルの心の繋がりを描いたお話。
マイノリティへの偏見が根強く、正義の皮を被った力が執拗に無償の愛を潰そうとする。
マルコの意志は蚊帳の外、ソーシャルワーカー(?)の調査や教師の好意的な発言に効力は与えられず、法的に勝ち目が見えてこない。
それどころか、特例(?)で母親を出所させ、ルディとポールに接近禁止令を出す。
もう怒りの頂点!!地団太モン!!
(落ち着け、、、)
チョコレートドーナツとハッピーエンドが大好きなマルコ。
タイトルのように甘さのない結末で、ルディの想いが込められたラストソング「I shall be released」が哀しく切ないけれど、「今すぐにでも」と社会に訴える力強さと、幸せいっぱいだった笑顔と純粋に居場所を求めていたマルコが重なるラスト。
愛の物語と残酷な社会は、「メイジーの瞳」と同じく、子育て家族、血の繋がりを問いかけ、勝ち組であろうが負け組であろうが、多数派であろうが少数派であろうが、悪い奴は悪く、良い人は良い人なんだ。
幸せになろうとして何が悪い!
★4.8

子供時代から冴えない人生を送るポール・ポッツ(ジェームズ・コーデン)は、歌うことが大好きで、オペラ歌手になる夢を持ちながらもケータイ・ショップの店員に甘んじる日々。
そんな彼にもようやく春が訪れ、メールで知り合った気だての良い女性、ジュルズ(アレクサンドラ・ローチ)と恋人同士になる。
彼女の叱咤激励が功を奏し、ヴェネチアへのオペラ留学が実現、憧れのパヴァロッティの前で歌う機会にも恵まれたのだったが…。
*イギリスの人気オーディション番組での優勝をきっかけに、世界的オペラ歌手となったポール・ポッツの波瀾万丈の半生を映画化した音楽伝記ドラマ。
「プラダを着た悪魔」のデヴィッド・フランケル監督が、ユーモアと心温まるタッチで描き、劇中の歌は、すべてポール・ポッツ自身が実際に歌っている。
ジュリー・ウォルターズとコルム・ミーニイがポールの両親を、「パイレーツ・オブ・カリビアン」目玉の海賊、マッケンジー・クルックが携帯電話ショップの店長でポールの親友を演じる。
ワンチャンスを摘まむまでの二転三転が、映像と音楽に乗せ軽妙に展開していくので、気の毒で仕方ないことなのになんだか可笑しい(笑)
周囲の人達や妻の愛に支えられ夢を叶えるサクセス・ストーリーで、結末は分かっていても、再三の運の悪さで紆余曲折があると自然に応援したくなるし、最後はとっても清々しい気持ちになる。
体格や顔つきが似ているジェームズ・コーデン、ポール・ポッツ本人の吹き替えであってもレッスンはしたそうで、本当に歌っているような迫力があったし、冴えないっぷりにクスッと笑わされます。
両親もユニークというか(笑)、あまり良好ではなかった父親と息子の関係は心温まります。
息子は父親に認められるのが一番嬉しいのではないでしょうか。
そして、とにかく、デキた妻が本当に素晴らしい!
寛容で優しく、どんな時も夫を信じて支え続ける。
ポールの成功は、彼女なしでは有り得なかったかも。
才能に恵まれていても自分ひとりの力だけではなく、こういう素敵な人達の支えがあって掴めるものなんでしょうね。
そう思わせる主人公以外のキャラクター演出も上手でした。
自分には何の才能もないけれど、もし、そんな人と巡り合うことでもあったら、そういう周りの人間になりたいな(笑)
★4.7
「誰よりも狙われた男」2014年公開

ドイツの港湾都市ハンブルク。
同国の諜報機関によって、イスラム過激派として国際指名手配されているチェチェン人イッサ・カルポフ(グリゴリー・ドブリギン)の密入国が確認される。
テロ対策チームを率いるギュンター・バッハマン(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、さらなる大物を狙うため彼を泳がすことにする。
一方、親切なトルコ人親子に匿われ政治亡命を希望するイッサを、人権団体の若手女性弁護士アナベル・リヒター(レイチェル・マクアダムス)が親身になってサポートしていく。
イッサは、アナベルを介して銀行家のトミー・ブルー(ウィレム・デフォー)と接触を図る。
CIAも介入してくる中、アナベルとトミーの協力を強引に取り付けたバッハマンは、ある計画へと突き進むが…。
*ジョン・ル・カレの同名スパイ小説を「コントロール」「ラスト・ターゲット」のアントン・コルベイン監督が映画化。
国際指名手配の青年を巡り、ドイツの諜報員はじめ様々な組織や個人の思惑が交錯していくスパイ映画。
イーサン・ハントやジェームズ・ボンドのような派手なアクショ、ドンパチは一切ない、地味な作業と手間を掛け、巧みに練られた作戦で心理戦や頭脳戦を繰り広げる濃密なドラマだった。
ジョン・ル・カレの小説、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を映画化した「裏切りのサーカス」同様、個人や人間関係をメインとした緊迫感のある奥深い内容で、尾行や盗聴などのスパイ活動をさりげなくもスリリングに見せる。
自転車で走行するアナベルを拉致する場面とか、地味ながらも完璧。
「世界を平和にする」目的は同じでも、バッハマンとCIAの理論ややり方は真逆であって、苦労しながらも順調に進んだはずの作戦が、まさかの展開になってしまったラストには、敗北感や喪失感でいっぱいになるけど、現実、こういうことが多々あるのだろうと怖さも残る。
バッハマンの仲間には、「東ベルリンから来た女」のイルナ・フライ、「ラッシュ/プライドと友情」のダニエル・ブリュール、CIA諜報員にロビン・ライト、レイチェル・マクアダムスとウィレム・デフォーがバッハマンの協力者とさせられてしまう民間人を演じ、フィリップ・シーモア・ホフマンの存在感と安定ある重厚な芝居が物語を引っ張り続ける。
2014年にオーバードースで急死し、最後の主演作となってしまった。
本当に残念。
★4.8
「チョコレートドーナツ」2014年公開

1979年、アメリカのカリフォルニア。
シンガーを夢見ながらショーパブでダンサーとして日銭を稼いで暮らすゲイのルディ(アラン・カミング)は、ゲイであることを隠して生きる検事局の男性ポール(ギャレット・ディラハント)と一目惚れ、2人はたちまち恋に落ちる。
ある日、ルディのアパートの隣の部屋に住むダウン症の少年マルコの母親が、薬物所持で逮捕されたため、マルコは強制的に施設に送られた。
ところが施設を抜け出し家へ戻ろうとしていたマルコを見つけたルディとポールは、同性愛の恋人同士であることを伏せ、法的手続きによりマルコの監護者となり面倒を見ることにする。
3人で幸せな日々を送っていたが、ルディとポールが恋人同士であることが周囲に露見したことから、二人はマルコの監護者と認められず、マルコは再び施設に送られてしまう。
マルコを取り戻すため、二人は裁判に臨む決心をするが…。
*1970年代のアメリカを舞台に、世間の無理解と葛藤する一組のゲイ・カップルが、親に見放されたダウン症の少年と家族としての愛情と絆を育んでいくさまと、理不尽な差別や偏見に対して決然と立ち上がる姿を描いたヒューマン・ドラマ。
アラン・カミングは海外ドラマで人気だそうですが、私が知っているのは「X-MEN2」のナイトクロウラー役(素顔が判らないけど~笑)。
「キャバレー」でトニー賞受賞の実績があり、今年はトニー賞の司会もされていました。
何曲かの歌の場面は本作での見物のひとつ。
迫力があり、切々として、胸に沁みわたる見事な歌唱力です。
ルディはありのままので、母性(笑)の深い人。
辛辣なジョークも効いています。
元々真面目で善人のポールも、ルディと出会い人生の価値観が変わったと思います。
もちろん、マルコも…。
“偏見と差別“”家族と愛”
二つの普遍的なテーマで、ダウン症の少年と彼を引き取ろうとするゲイカップルの心の繋がりを描いたお話。
マイノリティへの偏見が根強く、正義の皮を被った力が執拗に無償の愛を潰そうとする。
マルコの意志は蚊帳の外、ソーシャルワーカー(?)の調査や教師の好意的な発言に効力は与えられず、法的に勝ち目が見えてこない。
それどころか、特例(?)で母親を出所させ、ルディとポールに接近禁止令を出す。
もう怒りの頂点!!地団太モン!!
(落ち着け、、、)
チョコレートドーナツとハッピーエンドが大好きなマルコ。
タイトルのように甘さのない結末で、ルディの想いが込められたラストソング「I shall be released」が哀しく切ないけれど、「今すぐにでも」と社会に訴える力強さと、幸せいっぱいだった笑顔と純粋に居場所を求めていたマルコが重なるラスト。
愛の物語と残酷な社会は、「メイジーの瞳」と同じく、子育て家族、血の繋がりを問いかけ、勝ち組であろうが負け組であろうが、多数派であろうが少数派であろうが、悪い奴は悪く、良い人は良い人なんだ。
幸せになろうとして何が悪い!
★4.8