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クレイジー・ハート 

2010, 08. 06 (Fri) 00:01

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57歳のカントリー・シンガーソングライターのバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)は、かつて一世を風靡したものの、すっかり落ちぶれ、今では場末のドサ回りで食いつなぐ日々。
孤独で酒浸りな生活を送るバッドは、シングルマザーの記者ジーン(マギー・ギレンホール)と出会う。

落ちぶれた伝説のシンガーソングライターが、女性ジャーナリストとの出会いをきっかけに再起を図る愛と再生を描いた音楽人生ドラマ。
T=ボーン・バーネットとライアン・ビンガムの共作による主題歌「The Weary Kind」はアカデミー歌曲賞に、ジェフ・ブリッジスはアカデミー賞主演男優賞を受賞。


観て聴いて{★★★㊤3/5}

とっくにピークを過ぎた57歳のバッドは、アメリカ南西部のボーリング場や場末のバーを愛車と共にドサ周りする。
普段はうだつの上がらないおじさんだけど、ステージでギター片手に歌い出だすと、その声は何とも魅力的で客席の女性達はメロメロになっている。
何度も失敗した結婚、だらしなく太ってしまった身体、酒は止められず、行きずりの女とモーテルで目覚める日々。
かつての栄光にすがりはしないが、弟子だったトミー(コリン・ファレル)が人気絶頂な中、新曲が書けなくなっても音楽に関しては強いプライドを持つバッド。
ある日、娘ほど年の離れたシングルマザーのジーンと出会い、これまでの堕落した人生にひとつの光を見つける。
彼女の幼い息子バディにも好かれ、初老に差し掛かった最後のチャンスとまっとうな人生を送ろうとする。
まだ離婚の痛手から立ち直ってはいないジーンと少しずつ信頼を築き、愛し合うようになるが、お酒が原因で彼女の信頼を裏切ってしまう。
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よくミュージシャンにはお酒が似合うと言われますが、バッドに取ってはそれを通り越し、あらゆるトラブルの原因となっています。
自分の弱さを認めそこから立ち直っても、失った大切なものはもう戻らない。
そんなバッドの心を癒してくれるのは音楽だけ。

トミーのコンサートの前座を務めたり、長年疎遠だった息子に連絡したりと、バッドの姿は「レスラー」のランディと何となくシンクロしてしまう。
ミッキー・ロークには、まるで近所のおじさんの日常を観ているような感覚にもなったけど、こちらのジェフ・ブリッジスの自然体な演技も、自堕落だけど憎めない人間臭い哀愁やプライドのわびしさが感じられました。
ジェフ・ブリッジスはバッドの人となりを彼の役者魂全てで見事に演じたのだと思います。
彼ありきの作品だと感じました。
まあ、歌声を聴くだけでも絶対に損のない映画です♪
しみじみと人生を語るカントリー・ミュージックが素晴らしいです。
出来れば字幕歌詞をつけて頂きたかったです。
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バッドをさりげなく支えるバーのマスター、ロバート・デュバルはわずかな場面でも出てくるだけで存在感があります。
スターになってもバッドを尊敬し慕うトミー。
彼がバッドの素晴らしさを語れば語るだけ、今のバッドが哀れに思えてしまう。
ノン・クレジットですが、コリン・ファレルの気の良さと披露する美声もこれまた良かったです。
バッドと恋に落ちるシングルマザーのジーンは、どこか生活臭さと疲労感があって、マギー・ギレンホールのどよんとした表情にピッタリで上手な演技でした。
ただ個人的に、お友達にはなれてもバッドのようなおじさんとの恋愛はありえないので、愛していたと言うよりは、彼女も寂しかったのだろうと考えた方が、個人的にはしっくりといくかな~と思いました。

もう一波乱あるのかと想像していたので、「レスラー」に比べればあっさりめの味付けかな。
1年4ヶ月…と出た時、トミーに最高傑作を残して他界したのかと思ったら、小ざっぱりとしたバッドがステージ裏で見守っていました(笑)
ジーンと再開した南西部の風景がバッドに溶け込むようで、音楽と共に再生した彼の笑顔はとても清々しかったです。

2010年 6/12公開 アメリカ映画
監督 スコット・クーパー