小さな命が呼ぶとき
2010, 07. 30 (Fri) 23:35

エリート・ビジネスマンのジョン(ブレンダン・フレイザー)には、“ポンペ病”に侵された2人の子供がいた。
治療薬の開発も進まない中、ポンペ病の権威、ロバート・ストーンヒル博士(ハリソン・フォード)に会いにいったジョンは、それまでのキャリアを捨て、治療薬を開発する製薬会社を起業することを決意する。
実話を基に、我が子を救う治療薬のため、製薬会社まで設立した父親の奔走を描くヒューマン・ドラマ。
視点を変えたお父さん{★★★3/5}
愛する我が子の命を救うため、父親の並々ならぬ決意が描かれた作品でした。
ポンペ病はこの映画で初めて知りました。
遺伝子異常で起こるそうなので、ジョンとアイリーン(ケリー・ラッセル)夫婦の3人の子供の内、2人がポンペ病のため長く生きられないと告知されています。
平均寿命が短いこの病には、これと言う治療薬がなく、ジョンは残された時間を子供達と過ごすことより、ポンペ病権威のロバート博士と共同で治療薬開発のため製薬会社を立ち上げます。
いわゆるお涙頂戴に描いていないので好感が持てました。
映画は病魔と闘う子供たちにスポットを当てたのではなく、子供たちの命を救うため、安定と保証を投げ出して起業するエネルギッシュな父親の物語。
当然、そのためには絡んでくる資金やビジネスの損益。
ジョンは、財団やベンチャー企業の設立、大手製薬会社へ買収(してもらった)り新薬開発のために奮闘します。
元々優秀なビジネスマンなので、彼の十分なスキルが活かされます。
片やこちらも優秀でバリバリの科学者気質であるロバート博士は、絶対の自信はあるものの、いまだ成果が出せないまま。
博士の協力なしに新薬は有り得ないと信じるジョンは、人付き合いが苦手で感情を露にする博士を宥めたり賺かしたりして操縦します。
始めは新薬に関して互いの個人的な事情の違いも当然あったろうし、行き違いや裏切りもありますが、二人はポンぺ病で苦しむ患者を救うために、己の余計なプライドを抑えながら難題に立ち向かっていきます。
協調性がなく我が道を行く博士が、ジョンや家族と関わるうちに、次第に社会性を身につけていた様子も微笑ましかったです。

実話であるので、劇的な展開はないにしても、物足りなさはありました。
二人三脚で新薬を開発したのかと思っていたので、難題はあったものの、わりとトントン拍子のサクセスストーリーでもあったし、製薬会社に買収されてからはやはり大手企業に利用されているだけのようにも感じてしまい、試験的な新薬の投与も、素直に良かったと思えるかと言ったら、多少の疑問は残りました。
緑だとか黄色だとか(に置き換えて?)何パターンかの酵素をどうこうって分析実験(?)の結果も、結局、博士の酵素ではなかったってことなのかな…。
この二人の努力でどれだけの患者が救われたのか、幼児期に効果があるとされたデーターがその後どうなったのか、など、まだ途上段階であるのでしょうか。
なのでどちらかと言うと、どんなことがあっても家族を守る父親のビジネス・ストーリーと、気難しいロバートが人としての感情に芽生え、成長する印象を受けた映画でした。
2010年 7/24公開 アメリカ映画
監督 トム・ヴォーン