グラン・トリノ
2009, 04. 26 (Sun) 23:50

頑固で偏狭なウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、妻に先立たれ息子たちとも疎遠で、一人静かに暮らしている。
ある日、愛車グラン・トリノが盗まれそうになったことをきっかけに、アジア系移民モン族のタオ(ビー・ヴァン)と知り合う。
「ミリオンダラー・ベイビー」以来、4年ぶりにクリント・イーストウッドが監督・主演を務めた人間ドラマ。
孤独に生きる人種差別主義者の偏屈老人が、隣人のアジア系移民家族と思いがけず交流を深めていくさまをユーモアを織り交ぜながら描く。

ユーモラスで重厚で感動的なヒューマンドラマでした。
観客は何を求めて映画を選んで観に来るか…
イーストウッドほど心得ている監督は他にいないのかも~と思いました。
デトロイト郊外の住宅地で、長年フォードの組立工として働いてきた一人暮らしの偏屈爺さんウォルト。
妻亡き後、やはり年老いた愛犬デイジーと暮らしている。
誰にでも憎まれ口を叩き、皮肉めいた態度を見せる頑固振りは、憎たらしいどころか親しみを覚えてしまいました。
住宅地は非白人が占める割合が多くなり、しかも隣は英語さえろくに話せないアジア人。
ある出来事をきっかけに、その家の姉スー(アーニー・ハー)と弟タオとの交流が始まっていき、次第に我が子のように愛情を注ぎ込んでいくことになります。
多少、ネタバレです

朝鮮戦争の帰還兵であるウォルトは、今もその傷跡から抜け出せず十字架を背負っている。
亡くなった妻は、ウォルトに懺悔することを望んでいたのだと牧師から勧められるが、その誘いもあれこれと小言を並べて相手にしない。
息子とは確執があり、今時な孫には眉をしかめる。
バースデーには、長男夫婦からマジックハンドと数字が大きく書かれた電話をプレゼントされる。
年老いての1人暮らしより老人ホームはどうかと勧めれ、怒りに満ち溢れていく顔つきが最高に笑えた!!


モン族との交流も面白おかしく笑えました。
助けられた時はどうするか、悪い事をしたらどうするか、風習を守る彼らは頑固爺さんの上手をいってました!
階段に並べられる色とりどりの花や食べ物に戸惑うウォルトが可愛い(笑)
異文化である風習の違いは興味深かったです。
この物語には“生きる”という強いメッセージがありました。
冒頭、妻の葬儀シーンから始まり、ウォルトはしばしば咳こみ、病院で何らかの診断書を受け取り、息子に電話する…
そこには確実に彼に死が近づいていることを暗示させながら、
目標のない日々を送っていた心優しい内気なタオに、中身のある男になれるようボロクソ言いながらそれとなく指導していく。
それはまるで父親代わりのようであり、
また自分の息子たちには接してやれなかった罪滅ぼしでもあったようにも感じました。
未来あるタオとスー、その一家を守る為にウォルトが選んだのは…
あれほど嫌っていた懺悔に出掛けますが、戦争での事は懺悔しませんでした。
ウォルトは神に許しを請うより違う道を選んだのです。
最後はまるで十字架のような姿だったと感じました。

愛車“グラン・トリノ”は、ウォルトに取って心の友であり古き良き時代の象徴。
白人がほとんど居なくなった住宅地で星条旗を掲げ、磨き上げた愛車を見ながらビールを飲む。
米を食う国の車が売れ、輝かしいアメリカは自分の居場所だけだと誇示するように。
アメリカについての映画を撮り続けているイーストウッドが、
余計なセリフは一切入れず、シンプルな映像でそれを物語っていました。
生きること、死ぬこと――
ウォルトの生き様に涙が溢れてきました。

こんな悪たれ爺さん、側にいたら鬱陶しいでしょうねぇ(笑)
でもそこが可愛らしくもありコミカルで、愛すべき頑固爺さんでありました。
床屋との辛辣な会話も楽しいです~!
それ故、家族からは呆れて相手にはされないですが(まあ、あんな息子一家とは、爺さんじゃなくても関わりあいたくないかも~苦笑)
孤高(笑)で己の正義を貫くクールなクリント・イーストウッドも魅力的でカッコ良かったです!
本当にこれが出演最後なんでしょうか~残念です。
良い映画でした~アカデミー作品賞、どうしてダメだったんでしょう。
音楽を大切にする監督らしい哀愁あるエンド・ロールでした~♪
2009年 4/25公開 アメリカ映画
監督 クリント・イーストウッド