fc2ブログ

レイチェルの結婚 

2009, 04. 22 (Wed) 14:28

rachelgettingmarried_galleryposterRACHEL GETTING MARRIED
ドラッグ中毒更生施設の入退院を繰り返していたキム(アン・ハサウェイ)は、姉レイチェル(ローズマリー・デウィット)の結婚式に出席するため施設を一時退院する。
結婚式の準備でごった返す家の中、キムの存在が家族の衝突を引き起こす…。

シドニー・ルメット監督の娘ジェニー・ルメットが書き上げた脚本を、「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ監督が映画化。
バックマン家長女の結婚式までの2日間を、ドキュメンタリー・タッチで描く。
2125_6070592894RACHEL GETTING MARRIED
またまた悪い癖で、“問題児を抱える一家の再生物語”かと思っていたので、この展開はちょっと拍子抜けしてしまいました。
ハンディカメラでバックマン家のホームビデオを観るような映画なので、
スピーチや音楽に踊りの場面が多くて、好みはあるでしょうがちょっとしつこかったです。

キムはチェーンスモーカーで常にイライラして、些細な出来事にも我がままを押さえられない。
自分の存在を認識したい為に周りに迷惑をかけ、干渉されると迷惑がり、相手にしないと無視されたと怒る。
その一方で、過去、自分が起こした出来事を深く後悔し、変わりたいと願っている。
971_12723199587RACHEL GETTING MARRIED
父ポール(ビル・アーウィン)と母アビー(デブラ・ウィンガー)は離婚し、それぞれ再婚。
後妻キャロル(アンナ・ディーヴァー・スミス)はネイティブアメリカン系、
レイチェルの結婚相手のシドニー(トゥンデ・アデビンペ)は黒人、
ミュージシャンである新郎の友人や父親も音楽関係なのかな、アジア系、インド系などなど、あらゆる人種が登場。
家の中は結婚式の準備でさまざまな人々が集い、いつも音楽が流れて歌い踊る。
キムを迎え入れる友人たちは、表面上は自然に振る舞うけれど、なるべく関わらないように見て見ぬ振り。
そんな中で家族はぶつかっていき、キムの過去が明らかになっていく。
5470_8269227233RACHEL GETTING MARRIED
腫れ物に触るようにキムと接する父。
キムの理解者であるように見せながらも、どこか彼女を疎ましく感じるレイチェル。
今は家族と離れて暮らす冷めた態度の母。
更生を目指す家族がいるのに、自分達の言動がキムの感情を逆撫でしていることに気付いていないようで、この一家には自覚がないのか?!と思ってしまった。
厄介者のキム以上に、姉も父も実の母親も問題が山積みな感じ。
キムの過ちに対して、乗り越えたり許したり出来ないまま、それでも家族は家族でいなければならないのだと言う思いが、どこかよそよそしくて意思の疎通がない。

真っ先に家族から逃げた母親は、一番傷つき一番弱い人だったのかもしれない。
父親も「あれは事故だ」と言うが、傷は深く残っている。
そして結婚を機に、コネチカットからハワイで新生活をスタートさせるレイチェルもまた家族から逃げたいのではないだろうか。
当事者のキムだけがその事実から逃れられず、本気でぶつかって行っても空回りするだけ。
一緒にいると、誰かを傷つけ自分も傷ついてしまう家族なんだろう。
226_3309463642RACHEL GETTING MARRIED
9457_9051360989RACHEL GETTING MARRIED
離れている親戚や家族が集まる一大イベントの結婚式という設定は、本音と建前、家族にある問題や絆、姉妹の明暗などよりリアルさを与えていたと思いました。

キムに共感できるわけではありませんが、レイチェルって人もどうかと思いました。
食事会でのキムのスピーチに対して言い争っていた時、突然妊娠を告白し、焦点をずらしてしまったり、美容院でのこと、そしてラストの後姿には「やれやれ…」みたいな安堵感を観たような気がしました。
姉らしい思いやりもありますが、キムはレイチェルに対しては特別な感情があると思うので、何だか彼女が可哀想に思えてしまいました。
家族のあり方を考えさせられる映画でしたが、明るい希望や未来を感じることは出来ず…
キムは甘えを捨てて、一人でしっかりと立ち直っていくしかないのでしょう。
332730view009RACHEL GETTING MARRIED
他人と上手く関われず情緒不安定で繊細なキムを、評判どおりアンは好演していたと思います。
最初監督は、レイチェルとキムのどちらかを…とオファーしたそうですが、アンはキムを選んだとのこと。
彼女の新境地となったのではないでしょうか。

レイチェルのローズマリー・デウィットと母のデブラ・ウィンガーが、内に秘めた女の冷たさと言うのか~これも好演だったと思います。
姉は結局、臭いものに蓋をして、サッサと幸せになるわ~みたいで(汗)
問題は母親なんですが、同じ母親としては計り知れない辛い経験だと思いますが、ここは残された我が子を一番に思ってやらなくてはならないのではないでしょうか。
どうして一緒に苦しんであげれなかったのか…
事件が起こる前から、この家族は自覚がないけど崩壊してたんでしょう。

それにしても離婚して二人とも再婚できるなんて、羨ましい(苦笑)
あと、数日掛けて友人が集い手作りの式を準備してくれるなんて、日本では考えられない。
みんな仕事とかどうなってんの?と邪推(汗)

2009年 4/18公開 アメリカ映画
監督 ジョナサン・デミ