ダイアナの選択
2009, 04. 10 (Fri) 22:48

高校生のダイアナ(エヴァン・レイチェル・ウッド)は、退屈な毎日に不満を募らせる反抗的な不良少女。
内気でまじめなモーリーン(エヴァ・アムリ)と仲良くなり、対照的な2人はいつしか深い友情で結ばれていた。
ある日、トイレでおしゃべりしていた2人は、突如銃声と叫び声を聞く。
銃を手にしたクラスメートが乱入し、“どちらかひとりを殺す、選べ”と残酷な選択を迫った──。
それから15年。
ダイアナは優しい夫とかわいい娘と幸せな家庭を築いていた。
しかし、事件のトラウマは彼女の心に深く暗い影を落としていた…。
多感な高校時代に銃乱射事件に遭遇し、犯人に自分の命か親友の命かという過酷な選択を迫られたヒロインのその後の人生を見つめる衝撃のヒューマン・ミステリー。
「砂と霧の家」のヴァディム・パールマン監督がローラ・カジシュキーの「春に葬られた光」を映画化。

32歳となったダイアナ(ユマ・サーマン)は、哲学教授の夫と娘に恵まれ自分も美術を教えていた。
事件の15周年行事が近づき、彼女の胸には過去の記憶が次々と蘇ってくる。
娘のエマは、まだ小学校低学年(ぐらい)。
若い頃の自分に似た子供らしからぬ言動もあり(ちょっと多動ぎみ)手を焼いている。
そんなダイアナの現在と過去が交差しながら物語は進んでいきます。
高校乱射事件で心に深いトラウマを負った彼女は、どのような人生をおくっていたのか…
ひとりの女性の2つの人生には、過去と未来、現実と理想、生と死が描かれています。
以下ネタバレします。
まだご覧になっていない方は、スルーしてください。

私は「高校乱射事件」を題材にした「人間ドラマ」だと勝手に想像して観ていたので、
もしやそのように期待していると、ラストでは驚く事になるかもしれません。
勘の良い方は気付かれると思いますが、私はまんまと騙されました。
正直、先日のある作品のように、また??とも思いましたが(汗)否定的に捉えることはできませんでした。
後から思い返してみれば、あれもこれもたくさんの伏線があります。
「人間の体の75%は水でできている」などと教えてくれた生物教師…
ゴーギャンの絵画…
ウィリアム・ブレイクの詩…
モーリーンとの高校生活や会話、プールのシーン…
マカフィー教授が講演で語る「未来の自分を想像することで、現在を前向きに生きられる」という言葉などなど、数え切れないほど。

高校時代の楽しいはずの思い出は、必ず事件の日に繋がってしまう。
過去の積み重ねが未来を作るのではなく、どう生きるかがより良い未来を作る。
生死を迫られたダイアナの選択は、苦しい人生を強いられてしまった彼女に同情を感じると共に、「自分ならどうする」と「良心」を投げかけられた気がしました。
結果、オチはいわゆる某驚愕作品系ではあるのだけど、オチそのものの衝撃を狙って作られた作品ではないのが大きな違いではないでしょうか。
それは多感な頃の少女の日常生活を丁寧に描いてあって、物語の流れも時間軸の見せ方も(同じ場面を少しずつ進行させたり)と組み立て方も上手かったと感じました。
私は好きな作品になりました。

ダイアナを演じた二人の女優が素晴らしかったです。
エヴァン・レイチェル・ウッドの若くて無防備で怖いもの知らずな無鉄砲さ、
それとは対照的に、30代を向え幸せで理想の暮らしを過ごしていても、どこか疲れて張りのないくすんだユマ・サーマンの雰囲気が、乱射事件から一転、心に深い傷を抱えてしまったのであろうと、物語に深みを持たせていたと思いました。
モーリーンを演じたエヴァ・アムリは、スーザン・サランドンの娘とのことで、目元口元はそっくり。
演技も母譲りでした。
クレジットのラストに「監督の答え」のキーワードが出ましたが、
公式ページでその答えを見たところで、映画観てれば解る事を特別語る必要もないのでは~?!
と、思ってしまいました(苦笑)
2009年 3/14公開 アメリカ映画
監督 ヴァディム・パールマン