ヴィーナス
2008, 12. 16 (Tue) 14:03

70代の俳優・モーリス(ピーター・オトゥール)。
若い頃は浮き名を流した人気スターは、いまや仕事は死に役などばかりで、人生の輝きはすっかり過去のものとなっていた。
ある日、役者仲間イアン(レスリー・フィリップス)の姪の娘ジェシー(ジョディ・ウィッテカー)が、田舎町からやって来る。
モーリスは、自由奔放で無愛想なジェシーに心ときめかせてしまう。
20代の奔放な女性と出会い、人生を見つめ直す70代の男性が描かれるヒューマンドラマ。
監督は「ノッティングヒルの恋人」「Jの悲劇」のロジャー・ミッシェル。

老い先短いちょいエロ爺さんが、若い女性に恋心を抱く。
ユーモアある内容で性と死が描かれ、映像や洒落たセリフなどセンスが感じられる映画でした。
コミカルな展開なので、クスッとなる場面も。
若い娘を手なずけようと、あの手この手と尽くすモーリスの姿は、どこか哀れで滑稽。
老人に本気になるわけないのに、そんな娘を“ヴィーナス”と呼び、彼女を崇拝しているかのような彼の恋心は甘酸っぱくもあり哀愁もありました。

わがままで生意気、無教養で可愛くもないジェシーは、かなりイラつく子。
モーリスの下心をうまく利用しては貢がせたりするのに、「汚い、汗ダラダラ、ベタベタ!!」とか酷い事を平気で言うし、
過去に辛い思いをしたらしいけど、学習能力も向上心もない自堕落な娘。
終盤には少しずつ彼女の中で何かが変わり始め、
イアンに対しても謝罪や優しい心使いが出来るようになったラスト喫茶店のシーンは良かった。


老いても老いたなり、老人たちの生き方に生命力を感じました。
モーリス、イアン、ドナルドの仲間が毎日喫茶店で交わす会話や、細かい日常に笑いがあります。
元妻(ヴァネッサ・レッドグレーヴ )との関係も、しっとりとしていて良かったです。
モーリスを演じたピーター・オトゥールが、恋にときめき、エロっぽい想像したり、すっぽかされたり肘鉄くらったりと、そんな老人を見事に演じています。
モーリスそのもののように思えました。
美術館で「鏡のビーナス」を見せたモーリスの気持ちが実るような映画のラストシーンが印象的。
地味なストーリーですが、優しい作品に仕上がっていると思います。
2007年 10/27公開 イギリス映画
監督 ロジャー・ミッシェル