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私は貝になりたい 

2008, 11. 23 (Sun) 23:25


高知の漁港で理髪店を営む清水豊松(中居正広)は、
妻の房江(仲間由紀恵)、息子の健一(加藤翼)とつましくも温かな家庭を築いていた。
そんな彼のもとに赤紙が届き、本土防衛のため中部軍の部隊へと送られる。

終戦を迎え家族の元へと帰ってきた豊松は、2人目の子供も授かり、
これからという矢先にB・C級戦犯として逮捕されてしまう。
絶対服従の上官命令に従っただけと無実を主張するが、過酷な判決が下ってしまった。

1958年にフランキー堺主演で製作された名作ドラマを中居正広主演で映画化。
一兵卒として戦争に巻き込まれた普通の市民が辿る人間ドラマ。
戦争がもたらす不条理や哀しみを描く。
004 私は貝になりたい12
1958年のテレビ版は、まだ日本で「反米」意識が強かった時代だったと思います。
何度か再放送でもあったのでしょうか、そのフランキー堺版の内容は覚えていませんが、何ともの悲しい終わりなのだろうと記憶しています。

今回のリメイクは、当時のものからすれば政治色や社会派な部分は強くないのだろうと思います。
当時を知る人には、色んな違和感を拭えない内容であるかもしれません。
金融不安や経済の悪化はあるものの、私達の暮らしは当時と比べようも無いほど恵まれていますし、
主演の中居君は国民的なアイドルグループSMAPのリーダーで、普段はあんな感じ(笑)
仲間由紀恵さんもヤンクミのイメージが強いし、決してお上手とは思えない女優さん(汗)
それでも、もしかしたらそうだからこそ、
何かを知るきっかけになるのなら、若い人にも劇場へ足を運んで観て欲しいと思う映画でした。
A級は学校でも教えられると思いますが、B・C級戦犯は900名ほど処刑されたそうです。
戦争、敗戦国としての不条理は、夫婦愛、家族愛にスポットを当てながら、ある家族の物語として伝わるのではないかと感じます。
013 私は貝になりたい15
心温かく三枚目な豊松は中居くんに合っていたし、巣鴨プリズンへ拘置されてからの彼の演技は見事です。
面会に来た家族との再会…金網越しの指にはもう涙涙。
執行前、教戒師小宮(上川隆也)に淡々と自分の人生を「つまらない一生だった」語る場面、
最後の手紙を書く鬼のような眼、死刑台へと登る階段…
もう本当に色んな思いが込み上げてきて、胸が苦しかったです。

ファンというわけではないけど(でも好きです~笑)
中居君はTVドラマ「白い影」や「砂の器」で、普段と違いすぎるシリアスな演技に驚かされましたが、
今回は不朽の名作で、フランキー堺の演技力も強い印象が残る作品であるだけに、大変な部分も多かったでしょう。
贔屓するつもりはないけど、頑張ったと思います!

お上手とは思えないと書いてしまいましたが(苦笑)
仲間由紀恵さんの献身的で芯の強い房江さんには、誰もが感情移入できるのではないでしょうか。
豊松の代わりに理髪店を切り盛りし、子育てし、嘆願書を集めに駆け回る。
けなげさと強さは当時の女性像を垣間見れたし、出陣する夫の壮行会で台所仕事しながら泣いている背中は辛かったです。

矢野中将役の石坂さんはもちろん良かったですが、
わずかな出番の大西役草なぎ君、「嫌な時代に生まれて嫌なことをしたものです」というセリフには、
戦争の傷跡とは、こういうものなんだと、重く残りました。
014 私は貝になりたい11
1年かけて撮影した風景がとても綺麗です。
そして今回タイトルにある「貝になりたい」に相応しい美しい海の景色は、
豊松の手紙と中居君の朗読で一層の物悲しさを感じ、私はハンカチを口に当てて嗚咽になってしまいました。
「生まれ変わっても人間にはなりたくありません、人間なんていやだ。
どうしても生まれ変わらなければならないのなら、いっそ深い海の底の貝に、、、
そうだ貝がいい
深い海の底だったら戦争もない、兵隊に取られることも無い。
房枝や健一のことを心配することもない。 私は貝になりたい…」
ここまでの絶望って…(大泣)

戦争映画を観ると思う事はいつも同じ。
報われない辛さと苦しさが心に残り、
そんな時代があって、今のこの時代があり、
そして戦争はまだ世界で起きているという現実です…

2008年 11/22公開 日本映画
監督 福澤克雄