ステート・オブ・プレイ ~陰謀の構図~
2008, 10. 31 (Fri) 19:56
「死者のプロフィール」
ヘラルド取材チームは、フォイから真相を聞きだすため、ホテルの一室を用意。
ダンは車を駐車場に止めてから荷物を持っていくからと、先にフォイを部屋へ行かす。
その間にフォイのバックから関係ありそうな書類をコピーした。
部屋に着いたダンは、わざとフォイの服にビールをかけ、着替えを取りに行ってあげるからと自宅の鍵をもらう。
ヘレンとピートと自宅に行き、パソコンや日記をスキャン。
ダンは「ソニア」と書かれた一本のビデオを見つける。
カルの追求にフォイはかつてソニアとつきあっていたことを認めるが、
不倫を密告したのは嫉妬したからで、ソニアを愛していたから殺してはいないと否定した。
スティーブンは報道アドバイザーのウィルソンから、エネルギー大臣のファーガスが自分の味方であることを知る。
スティーブンはウィルソンにカルと妻アンの不倫を告げた。
ウィルソンはヘレンを呼び出し、ソニアの記事を掘り下げてこれ以上スティーブンを追い込まない方が、
不倫している二人にも都合が良いのではと、意味ありげに話す。
カルと妻アンの不倫を知ったヘレンは、デラに確認。
信じられないデラだったが、スティーブンの怒りでカルがつぶされると事件まで闇雲になってしまう事を恐れ、キャメロン編集部長とスティーブンに会いに行く。
色々書きたてておいて、今度はこのスキャンダルをこっちが公表すると怒るスティーブンに、
「ソニアが本当にスパイなら、雇い主が知りたいだろう」と説得される。
ヘラルド取材チームは、フォイの口座に非課税の収入があったのを見つける。
振込先は利益団体のワーナー・シュロスで、2万5千ポンドを3回振り込まれていた。
ワーナー・シュロスは大手石油会社U-EXオイルの利益団体。
ソニアはフォイに、委員長のスティーブンの事務所での仕事をやらないかと誘われた(雇われた)と思われる。
キャメロン編集部長はダンの大学の元講師で、今はU-EXオイル社のスーザンに探りを入れろと指示。
ソニアのスパイ説を否定しなかったスティーブンに、
内部情報を仕入れて来いと言われたカルは、スティーブンと合うのを拒む。
キャメロンはもう知れている事として、カルはスティーブンの妻アンとデキているとチームの皆に暴露する。
警察からソニアとの付き合いに使った請求書を見せろと言われたスティーブンは、
ソニアに手当てを払った事はないと証明したいため必死で探す。
見かねた事務所のグリーアが変わりに整理をし、額が一番大きいのは、高級ホテルの滞在費だと報告を受けた。
それはソニアのおごりで出かけたものだったが、法人ワーナー・シュロスで支払われていると知り驚く。
ソニアが死んだ後、
匿名のメールを送り、何故事件を蒸し返したりしたのかデラとカルに問い詰められたフォイは、
「ソニアだけが死んで何食わぬ顔のスティーブンに憤りを感じた」と言うが、
「スティーブンに本気になってしまったソニアは、それは仕事のうちではないからと殺されたんだ」
「ワーナーシュロスからの仕事で報酬をもらったでしょう」と言われ動揺する。
更にカルは、ソニアの誕生日をシーナがフランスで祝っていた時に、
フォイが押しかけて行き、ソニアの就職が決まったと報告した時のビデオとシーナの証言テープがあると告げる。
「エネルギー委員会がどう動くかを探るのが利益団体の仕事で、ソニアをそのために送り込んだのだろう」と確信に触れられるがフォイは否定し続ける。
「もう信用できる仲間もいない、次はお前の番だぞ」とカルに言われるが、フォイは逃げ出す。
ダンはU-EXオイルの情報部のヘッド、スーザンと合い、単刀直入にフォイを知ってるかと尋ねる。
否定するスーザンに「ワーナー・シュロスを使って、エネルギー委員会にスパイを送り込み情報をU-EXに流してるのでは…」と言われ、スーザンは怒って席を立つ。
自分に対して何か陰謀があるのか不安に思うスティーブンは、カルを呼び出しソニアとのホテルの件を話す。
カルは「スティーブンの許可はとってある」として、グリーアから調査官の面接の資料を手に入れる。
フォイは何者かの車に尾行され、
キャメロン編集部長はヘラルド紙の上層部から、U-EXオイルの取材を控えるよう圧力をかけられる。
ついにカルとアンの不倫がチームの皆にバレて、チラリと嫌味を言ったピートに対し、
バカみたいな事言ってキレたり、解かっていてもどうしてもダメなんだ…とお子ちゃまみたいなカル

で、フォイのような弱い立場の者には、仕事とは言え、俄然強気で態度がでかい(笑)
デラ、よくこんなのと仕事できるわ~偉い

先週のラスト、ヘラルド内で盗聴していたのは、チームの仲間でしたぁ

フォイとの会話を全部録音して、文章に残して証拠としていたんですね

あんな終わり方だから、ここにもスパイがいるのかと思いました~深読みだった

名前はシド君。
フォイがゲイだという新しい情報もゲットしてきました

今回も話の展開が早くて、繋がりが随分と見えてきました。
「陰謀の構図」が徐々に黒幕へと進み出すでしょう。
やはりお決まりのように、ヘラルド紙のトップにも圧力がかけられて、
相当な権力者が絡んでいる事は想像できます

カルとアンの不倫に憤りを覚えるスティーブンですが、
ここはキャメロンの言うとおり、冷静で大人の対応を選んで良かったと思います。
この人、最初はどんだけいい加減かと思いましたが、
あまりにも生真面目で人を信じやすいから、
悪者からは利用されやすいタイプなんだろうな~と思います

と言うわけで、残すところあと2回。
ボーダータウン 報道されない殺人者
2008, 10. 30 (Thu) 23:53

シカゴの新聞社で働く女性記者ローレン(ジェニファー・ロペス)は、メキシコとアメリカの国境の町フアレスで起きている連続女性殺害事件の取材を命じられる。
そこでは汚職まみれの警察や政治家の支配により、真実は闇に葬られていた。
元同僚で、反政府系の新聞社エル・ソロを経営しているディアス(アントニオ・バンデラス)を訪ねたローレンは、事件の被害者で奇跡的に生還した少女エバ(マヤ・サパタ)と出会い真相究明に乗り出す。
10年以上に渡りメキシコで起きている実際の未解決事件を基に、連続女性殺害事件の真相を追う女性記者の姿を描いた社会派サスペンス。

NAFTA(北米自由貿易協定―米国、カナダ、メキシコ3国間の自由貿易協定)を背景に、
最低賃金を保証する必要のない地域フアレスには、マキラドーラと呼ばれる外国資本の工場群が急速に進出し建ち並ぶ。
働く女性たちの日給はわずか5ドル程度。
16歳のエバは、勤務の帰りに送迎バスの運転手とその仲間にレイプされた。
土中に埋められたものの、奇跡的に生還する。
この事件を中心に、ローレンは新聞社エル・ソロに助けを求めてきたエバを保護し、この地域での女性の連続殺人事件を明るみにしようと追及していく。
バスの運転手の善良な笑顔には恐ろしい落とし穴が。
行き着く先には仲間も待ち受けて、レイプされ殺害後、死体は埋められる。
エバが逃げ出した場所では、たくさんの家族たちが行方不明の娘を必死で探す。

最初はあまり乗り気な様子ではなかったキャリア志向が強いローレンは、エバの中に自分を見、
命がけで追求するジャーナリスト魂には頭が下がります。
この15年間で女性殺害事件が500件にも及ぶと言われ、実際には行方不明者を含め5000件と推計されているそう。
そのほとんどが未解決のままで、真実を闇に葬り去っている実態に大変驚かされました。
警察はまともに捜査せず、報道は権力に押しつぶされ、
企業や政府は、働き手の安全など配慮せず事件を無視している。
国際人権団体の要請にも捜査の進展はなく、
NAFTAを計算に入れる政治家や財界人が、工場を誘致した企業にフアレスの事件や治安の悪るさが知れて閉鎖されるのを恐れ、事件を闇に葬っていたらしい。
全てが共犯者…
これだけの事件なのに米メディアでは取り上げられることはなかったそう。
しかも報道機関にも圧力をかけねじ伏せる。
ローレンは、エバが生きている事を嗅ぎ付けた警察や加害者からかくまいながら、
事件の糸口を探っていくうち、もう一人の重要人物にたどり着く。
記事にされなかった原稿、新聞社エル・ソロに打ち込まれた銃弾、加害者の人物像など、
事実を基にエンタテインメント性の強いサスペンス映画でした。
まずこの事件が世界的に注目を集めなければという意図は伝わります。
公式ページにもありますが、
ジャーナリストの鳥越俊太郎さんでさえ、この映画で初めてこの事件を知ったそうです!
こちら
未解決事件なので、スッキリとした終わりでもないし、
何故このような桁外れな殺人事件が起きたのかは、やはり結果としては解かりません。
発展途上国ではありがちな事としても、町の治安を改善した方が、より多くの先進国が投資先として選ぶのではないだろうか~と単純に考えても、
圧力をかけたのは先進国アメリカであり、根本は何よりも経済や利益を優先するアメリカの問題であります。
グローバル化の汚点のひとつでもあるんでしょう。

権力に押されてしまった編集局長ジョージ(マーティン・シーン) が、
「今は調査報道の時代ではない」というセリフが印象に残りました。
ひとつ不必要な場面はあったけど、ジェニファー・ロペスはセクシーさを金繰り捨てて、バンデラスとタフなジャーナリストを演じています。
ラテン系の彼女だからこそ、より深みを感じられたと思います。
骨太な内容で、知ることができる映画でしたし、
監督のインタビューを読めば、この映画の製作には大変な苦労と信念を感じます。
監督インタビュー
2008年 10/18公開 アメリカ映画
監督 グレゴリー・ナヴァ
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
2008, 10. 29 (Wed) 22:00

カザフスタン国営テレビの看板レポーター、ボラット(サシャ・バロン・コーエン)が、祖国の発展のためにアメリカ市民に突撃取材を敢行し文化を学ぼうと大騒動を巻き起こしていく。
全米で予想を超える大ヒットを記録。
過激な内容で数々の訴訟問題を引き起こし、国際問題にも発展するなど一大センセーションを巻き起こした話題のコメディ・ドキュメンタリー。

WOWOWで観ました。
話題になっていたけど、内容もビジュアル的にも合わないだろうと劇場鑑賞はしませんでした。
この映画が描きたい内容は、皮肉であろうが、批判であろうが、笑いであろうが…
やっぱり私はダメでした。
自身がユダヤ系であるイギリスの人気コメディアン、サシャ・バロン・コーエン。
それを逆手に、過激な人種差別から、超下品でおバカな下ネタまで、
モキュメンタリー(フィクションが加えられたドキュメンタリー)タッチでドタバタと展開されていきます。
自分と極端に違う人と出会った時、
それなりの戸惑いや躊躇を感じながらも、出来るだけ(お互いに)合わせようとするものでしょうが、
その言動があまりにも突飛なので、受け入れ態勢からだんだんと感情が露になっていく人たちの様子はとてもリアルでした。
そんな人と関わると(あるいは無関心でも)人はどうなるか?と、変化と反応を面白がる目的は感じます。
でもオープニングからあまり笑えなかった~時々、文化の違いでクスッとはなるけど、
下ネタ苦手ではないですが、“下品”と言うより、言動が“汚い”下ネタ。
ボラットのキャラは、自然体(天然)で憎めないと思うのだけど、私は殆ど引きました。
ハマる人はハマるんしょうね~。
「バカには理解不能のバカです」のキャッチコピー通り、私は、バカなので理解不能です。
バカで良いです(苦笑)
GG賞優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)にノミネートされただけじゃなく、
最優秀主演男優賞受賞したんでしたよね。
さっぱり解らない…器用な人だと思うけど(汗)
出番は少ないけど、「トッド」は良かったです。。。
200年 5/26公開 アメリカ映画
監督 ラリー・チャールズ
ステート・オブ・プレイ ~陰謀の構図~
2008, 10. 27 (Mon) 18:10
「狙われたジャーナリスト」
カルはカバンの入手経路を警察に言わなかったため、司法妨害で逮捕された。
カバンのことを知る自分が逮捕されたことをニュースで流し、犯人をおびき出そうと警察に提案する。
それは同時に同僚のデラを守るためでもあった。
警官の警備つきでカルは釈放される。
ベル警部から、ソニアの口座に毎月2000ポンド振り込まれていた事実を教えられたスティーブンは、「自分が振り込んだのではない」と否定。
何故ソニアが殺されなくてはならなかったのか、自分との関係は何だったのかを知りたいから捜査に協力していると言うスティーブンに、ベル警部は「あなたの口座にも使途不明金が使われた形跡がある」と告げる。
ダンはソニアの親友シーナの証言から、
ソニアがエネルギー委員会に雇われる1ヶ月前に、既に調査官の就職が決まったと話していたことを突き止めた。
前の調査官のジュリーは、広報局からいきなりひきぬかれていた。
またフォイとソニアは以前につきあっていて、大学以来、くっついたり離れたりを繰り返しいまだに切れない仲であることも解る。
おそらくソニアとスティーブンの関係に嫉妬したフォイが、匿名の手紙やFAXを送り嫌がらせをしたのではないかと推測。
そしてソニアは狙われていることを知るとフォイに1時間も電話をしている。
カルは、嘘ばかりをつかず知っている事は隠さず話せとスティーブンに迫るが、
本当は別の女性に決めていたが、ソニアを雇ったのは事務所のグリーアに押されたからで、事前に決めていたわけではないと話す。
新聞でカルの逮捕を知ったケルビン殺しの犯人の男は、カルとスティーブンの妻アンが密会するホテルでベットの二人を襲う。
カルを護衛するチューイ刑事が犯人を追うが、特殊部隊によって射殺された。
男の身元は元兵隊で表向きは保安関係の仕事をしていたロバート・ビンガン。
ベル警部とチューイ刑事は、特殊部隊の行動に不審を感じる。
殺し屋を射殺したことで捜査の打ち切りをしようとする上層部に対し、なんとか突破口を開きたいベル警部は、デラから情報を引き出そうとする。
ケルビンの検死結果が最初のものから意図的に変えられたことを知ったデラとカルは、検死医ジョイを訪ねる。
いつの間にか報告が変わっていて、極秘扱いになったからと上司が関係ファイルを持っていってしまったと教えられた。
スティーブンが鍵を返しに自宅に戻ると、カルとアンが抱き合っていた。
責める立場ではないにせよ、親友と妻の関係には裏切りとショックを隠せない。
ベル警部とチューイ刑事は、上層部から捜査に圧力がかかったと確信し、ヘラルド紙と互いに協力して事件を解明しようと情報の提供を頼む。
まずフォイを崩すことから始めようと、ダンたちは帰国したフォイを空港で待ち伏せして情報をとる。
ヘラルド紙の社内には、編集長の部屋での会話を盗聴している怪しい人物が…
毎回展開は早いし、新たな証言者や関係人物が登場するので、
録画しながらでないと話についていけない


警察の上層部にも何らかの圧力が掛かってきたのは一目瞭然でした。
カルの警備に就いたチューイ刑事は、勇敢で機転が利き正義感も強い

捜査が妨害されないように、警察も記者たちもプロ意識で挑んでいるのに――
このカルって男は、何を考えているんだっ


自分がおとりになって殺し屋の接触を狙っている時に、
アンからのどうしても会いたいコールでホテルへ出向き、即エッチ

その現場で殺し屋に命を狙われ

編集部長に事実を責められると、
「あの~この取材から降ります、他の連中で大丈夫ですよ」なんて言えたこと


「あれはハプニングでして~」だって

「誘惑に負けて、プロのやることじゃない!」と一喝されたのに、今度はアンの自宅で、また…

アンもアンです

「子供たちの為に顔をあげてやっていくと約束したのに、よりによってこの男と…」とスティーブンに言われ、
「あなたのやった事に比べれば何でもない」とか「こうなったのはあなたのせい」とか、
頭おかしいんじゃないの


仕返しのつもりであろうが本気であろうが、アンにはもうスティーブンを責める権利はないです

おまけにカルからの甘ったるい留守伝を、子供を乗せてる車の中でスピーカーにしてニヤニヤと嬉しそうに聞いて、どんだけ無神経な母親(怒)


カルは本当にプロ意識に欠けた男です

最低です

アンも女としても母親としても失格じゃないですかぁ~

同情の余地なし

あくまでも事件を解決していくのはカルだとしたら、こんな関係が物語りの中で何か重要な意味でもあるのでしょうか?
カルはアンに疑いでも持っているからあえてこんな関係になったとか?
それともカルが怪しいの?
謎だらけ…

それにしてもアンって、
凄くガッシリとしていてデカイから、ベットシーンや身体の露出は見たくないんですが…

カルの方が細身で華奢な感じだから綺麗なラブシーンじゃない

と言うわけで、
今回はあまりにもおバカな二人の行動に腹が立ったので、怒りの絵文字だらけになりました(苦笑)

ブーリン家の姉妹
2008, 10. 26 (Sun) 19:56

16世紀、イングランド。
国王ヘンリー8世(エリック・バナ)は、王妃キャサリンとの間に男子の世継ぎが出来ず焦りを感じていた。
そこに目を付けた新興貴族のトーマス・ブーリン(マーク・ライアンス)は、聡明な長女アン(ナタリー・ポートマン)を愛人候補に仕立てようと目論む。
だがヘンリー王が目に留めたのは、商家の息子と結婚したばかりの気だての良い次女メアリー(スカーレット・ヨハンソン)だった。
エリザベス1世の母となったアン・ブーリンと、その妹メアリーが辿る愛憎渦巻く数奇な運命を描く歴史劇。
対照的な美しい姉妹が、ヘンリー8世の寵愛を巡って確執を深めていくさまをドラマティックに綴る。

時代に生きてきた人達の側面が上手く描かれていて、引き込まれる映画でした。
濃厚な内容と衣装や建築物と眼をも楽しませてくれ、何よりブーリン姉妹を演じるナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンの若い女優がどちらも素晴らしく、2人の女性の静と動、愛憎、強さを感じさせられました。
王家の世継ぎ問題は、血族的にも政治的にも重要であるのは承知のことではありますが、
あまりにも女性が単に“産み”だけに利用される対象であるのは、いささか不快にはなります。
悲しいかな女というものは、男(夫)に対して従順であり、また子孫繁栄のための道具のようでもあり、
アンのように話術にたけて長年に渡り王を惹きつけた魅力を持っていても、男子を産めない……
ただそれだけで自らも窮地に立たされてしまうのです。

ヘンリー8世って人は―
正妻といっても亡き兄の妻だったのですから、不幸にも流産続きで世継ぎに男子が出来ないと愛人作るのは仕方がないとしても、
メアリーに男子が生まれたのに、その対処は何なんでしょうか?
既にアンに心変りしたにしても、この王は一体、何が重要で何をしたかったのか?
女と見れば“未知との遭遇~新しい物好き”は殆ど病気ですね。
王としての当然の権利があるにしても、アンとの婚姻のために数年を費やし、離婚のため宗教改革までしたのに、そのエネルギーは達成すればそれで満足ってことだけみたい。

この時代、一家の繁栄のために娘の婚姻を利用するのは常識ではありますが、
私利私欲しか頭にない父トーマスに対極的な見解を示す母レディ・エリザベス・ブーリンには救われました。
彼女の一言一言は肯けることばかり。
最後にトーマスにあびせた一発はスッキリしました。

国王の寵愛を受け、「ブーリン家の娼婦姉妹」と王妃キャサリンに憎まれた姉妹の質の違う強さと絆。
野心家で計算高く激しい性格のアンと、控えめで優しく芯の強さを持つメアリー。
史実ではメアリーが姉という説もあるようです。
当時の美意識では、ふっくらした顔、青い瞳、明るいブロンドが美女とされていて、メアリーはまさにそれを代表する美人であったのに対し、アンは顔色が悪く、黒髪、黒い瞳で背も低く痩せていて決して美人とは言えなかったそう。
王女メアリーがフランスに嫁ぐ時、侍女としてフランスに渡ったメアリーとアン(7歳)
自分の欠点を補う話術や特技を身につけたアンは、帰国後、ヘンリー8世の眼に留まります。
アンは体に少し問題があったようで、自分の頭文字「B」をあしらったチョーカーは、喉元の大きなホクロを隠すためだったとか。


ヘンリー8世は、これまた別の愛人エリザベス・ブラントとの間にできた男子は認知しますが、
メアリーが産んだ男子は庶子のままだったそうです。
後にエリザベス1世の時代にハンスドン卿として高位についたそう。
メアリーは最初の夫、ウィリアム・キャリーが亡くなった後、国王付きの兵士だったハンフリー・スタッフォードと再婚。
最初の夫との間に生まれた長女キャサリンはノウルズ卿に嫁ぎ、
孫娘レティス・ノウルズ(エリザベス1世の従姉妹の娘)は、エセックス伯ウォルター・デヴァルーに嫁いだ身でありながら、エリザベス女王の愛人レスター伯ロバート・ダッドリー(映画ではジョセフ・ファインズ)と不倫。
夫の死後、レティスとレスター伯は密かに結婚し、エリザベス女王にとっては驚きの事実だったそうです。
レティスの孫娘フランシスがサマーセット公家に嫁いだことから、現在までメアリーの血筋は受け継がれ、
Wikiによれば、彼女の子孫にはエリザベス王太后、ダイアナ妃など多くの有名人が含まれているので、エリザベスの代で途絶えたアンの血筋とはこれも対照的です。

その対照的な姉妹をナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンが見事に演じていて、このキャスティングはピッタリと嵌っていたと思います。
アンは暗殺計画など裏工作もしたり、庶民にも人気がなかったようですが、
ナタリーの見せる気の強い表情、計算高い目つき、小悪魔的なアンに魅力を感じさせられます。
アンと違い慎ましい平穏な人生を選んだメアリーもまた魅力的な女性です。
スカーレットの体系やふっくらとした色白の顔は、冷静で落ち着いた芯の強い女性の内面が現れているようで、これまで彼女が演じてきたどんな役よりもとても良かったと感じました~私は好きです。

ヘンリー8世は次々と妻を取替え、6人の女性と結婚。
バチカンと断絶までしてアンと結婚したにも関わらず、男子が誕生しないと今度はアンの侍女であったジェーン・シーモアと結婚するため、アンを罪に陥れて処刑。
ジェーン・シーモアは待望の男子を産みますが、
元々病弱であったエドワード6世は、わずか15歳で亡くなりました。
エリック・バナって、現代劇より時代物コスプレの方が似合っているように思いました。
「トロイ」のへクトル王子は良かったけど、このヘンリー8世は最低ですね(笑)

兄?弟?ジョージはどこか頼りがなく気弱そうで、巻き込まれてしまった運命は可哀想でしたね~。
「ラスベガスをぶっつぶせ」のジム・スタージェスが好演でした。
政略を目論む叔父ノーフォーク公爵のデヴィッド・モリッシー。
毎週「ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~」でお顔見てますが、疲れる顔つきのこの人も、コスプレの方が良いかも。

どうしようもなく困ったさんのヘンリー8世に翻弄された姉妹ですが、
アンの娘エリザベス1世によって国の基礎が固められイギリスに黄金時代をもたらしていく結果は、
女性の勝利(?)すら感じてしまい、産むだけの道具ではないのだぞと声を大にしたいです。
エンドの曲はケミストリーなんですね…
ヴォーカルがないバージョンにしたのは正解だと思います♪
2008年 10/25公開 イギリス/アメリカ映画
監督 ジャスティン・チャドウィック
その土曜日、7時58分
2008, 10. 22 (Wed) 12:30

ニューヨークで優雅な暮らしをする会計士のアンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、
離婚した後、娘の養育費もまともに払えない弟ハンク(イーサン・ホーク)にある計画を持ちかける。
それは実の両親(アルバート・フィニー、ローズマリー・ハリス)が営む宝石店への強盗計画だった。
計画決行の土曜日、7時58分。
事態は最悪な方向へと突き進んでしまう。
追い詰められた二人の運命は…。
ある兄弟が企てた強盗計画が、誤算を引き金に思いがけない悲劇を招いていく。
巨匠シドニー・ルメットが、実力派俳優を集めて作り上げた緊迫感あふれるサスペンスドラマ。

邦題の“7時58分”は、強盗当日、それぞれの行動が時間軸で描かれるポイントで、特別な意味があるわけではないのですね~チケット窓口で言いにくいだけでしたが(苦笑)何となくそそられるような邦題ではあります。
原題は「BEFORE THE DEVIL KNOWS YOU'RE DEAD」
「おまえが死んだことを悪魔に知られる前に」
重いと言われる映画はたくさんありますが、これは久々、本当に重かった!!
サスペンスでありながら複雑な謎解きやアクション、当然ファンタジー的な要素など一切なく、
元妻から罵声ばかりを浴びせられるへタレな男も、横領や不正経理がバレそうで行き詰りそうな男も、
今の社会の中で特別珍しい存在ではないかもしれないその現実が、あまりにもリアルでズシッときました。
彼らは根っからの悪人ではなく、妻や子供を愛し幸せを守りたいと思っただけ。
破滅に向かっていく兄弟とその父親も巻き込んで、物語は一つの家庭が崩壊していく人間ドラマです。

兄アンディは麻薬漬けの日々。
会社の金を横領し、近々国税局の監査が入る予定で焦りを感じ始めている。
弟のハンクは“負け犬”“赤ん坊”呼ばわりされるへタレ君で、娘の養育費を数ヶ月も滞納している。
立場は違うけど、二人とも経済的に切迫していて早急にお金が必要。
ハンクは強盗にためらいますが、
どうせ保険が下りるから平気だと、アンディに言葉巧みに説得されてしまいます。
そのアンディが「完璧」と言い切る犯罪計画は、そうか?と思うほど稚拙で安易なんですが(苦笑)
犯行に恐れを抱くハンクは、知り合いのプロの男に話を持ちかけ実行犯になってもらい、自分は車で待機することにしました。(ミエミエの変装で)
ところが宝石店からは予想もしていなかった銃声があがり、相棒も母親も失ってしまう…
計画が失敗したことで窮地に立たされた二人の緊迫感は、
後半から彼ら家族の中にある根本的な問題が明らかになり、父と息子の確執も絡み自暴自棄になったアンディを破滅へと導いていくことになります。
ラストなんて、まあ、本当に後味が悪いと思うけど、「これは仕方がないかな」とも思えてしまいました。

気弱で情けない弟を、脅したり賺したりして自分の意のままに操るアンディを演じるフィリップ・シーモア・ホフマン。
いきなりボテボテの全裸Hを見せられますが(汗)
無表情に見せかけ、感情の起伏が見え隠れする演技は絶品ですね。
ストレスからかガックリと疲れた様子は、デカイ体が一回り小さく感じてしまいます。
時々の甲高い笑い声ひとつにしても上手い!
この弟を誘わなかったら、案外、計画は成功していたのかも~と。
養育費が払えず四苦八苦のハンクは、アンディの妻ジーナ(マリサ・トメイ)と肉体関係にあります。
母親の葬儀中に耐えれなくなり、ジーナに助けてコールするヘタレなハンクを演じたイーサン・ホーク。
終始、自信がなくオドオド顔で落ち着きもない。
やることなすことドン臭く情けない演技が抜群に嵌ってました。
結局のところハンクが元凶のようなのに、彼がこの危機を乗り切ってしまったようなところが、こんな社会って、変わることはないのかな~と感じました。

こんな息子を二人も持って、何と気の毒な父親だろう~と思わずにいられないけど、
自分たちが育てたのだからそれも当然と受け入れなければならないことなんだろう。
強盗も射殺されてしまい、それ以上捜査する気がないような警察に怒りを覚えながら、独自に動くチャールズはある事実を知ることになります。
「あんたに良く似てるよ、すぐに解かった」
もしかしたら、この言葉も引き金になったのかもしれません―
アルバート・フィニーは存在感がありました。
最初はシーモアとイーサンが兄弟?!
なんて思ったけど、これが観ているうちにどことなく表情が似ていたりして、更にアルバート・フィニーが加わると不思議に親子に見えてくる。
緊迫感ある役者さんたちの演技と、脚本の解かりやすさ、
また84歳になられたと言う監督が、このような内容の映画を作れるエネルギーは素晴らしいものです。
悲劇の連鎖で救いがなく好みも分かれるでしょうが、
完成度が高く社会派好きな方は満足する作品だと思いました。
2008年 10/11公開 アメリカ/イギリス映画
監督 シドニー・ルメット
イーグル・アイ
2008, 10. 21 (Tue) 03:12

お互いに面識のないコピーショップ店員のジェリー(シャイア・ラブーフ)と、子どもを人質に取られたレイチェル(ミシェル・モナハン)は、謎の女性に電話で命じられるまま否応なしに危険な行動を強いられていく…
スティーブン・スピルバーグの構想を元に作られたノンストップ・スペクタクル。

ストーリー展開はジェットコースター感覚。
派手なアクションにカーチェイス、クレーンに吊られたり投げられたりして、
携帯や街の電光掲示板から指示される通り、FBIの追跡から必死で逃げてどこか(目的地)へ誘導される。
ありとあやゆる人の携帯電話にアクセスしたり、地下鉄を操り、信号も次々と青にしたり、どこまでも意のままに動かされるのでとても不気味。
こんなメッセージ、見逃すでしょう~とか、もうとっくに死んでるよ~とツッコミたくもなるけど、
「あと5秒後…4、3、」なんて考える暇さえ与えず、次から次と指示に従わなければ殺されてしまうから、
そんなの気にしてる暇もないほどテンポは良く進んで行きます。
何故この二人が選ばれて、目的は?電話の主は?
その正体が見えた所から、あらららら…


トンネル内で、飛行機に追われて、大爆破…
起爆装置
演奏中(つい最近、同じようなの観た~笑)
電話の主アリア
似たような映画が次々と頭に浮かんできたのですがぁ。。。
最初のアフガン?の場面が伏線なんでしょうが、
結局、アリアさん、
「私の分析データーを信じられないって言うの!無視するの!もう、許せないわっ!」ってこと?!

ハイテク機器の監視システム、電話の盗聴や個人情報は、政府の犯罪対策のためとは言え、
どこまで知られてしまうのか恐ろしく問題であるのは間違いないし、自国に対しての警告でもあるのでしょうが、この内容ではかなり微妙でした~。
お金はかかってそうだけど、寄せ集めの映画みたい。
シャイア・ラブーフは無精髭生やして、初めて大人っぽいと思ったけど、
アクション映画のイメージばかりで、上手なのか毎度お馴染みの芝居なのか解からなくなってきた(苦笑)
ミシェル・モナハン、華がない。
「MI:Ⅲ」の時はまだ綺麗だったような…

B.B.ソートン、久しぶりに観たら老けた?!
アンジーと結婚してた頃は、お顔がもろエ○盛りって感じだったのに(笑)
男性は50歳過ぎた頃から差がでるのかなぁ~。
2008年 10/18公開 アメリカ映画
監督 D・J・カルーソー
P.S. アイラヴユー
2008, 10. 20 (Mon) 18:17

ホリー(ヒラリー・スワンク)は最愛の夫ジェリー(ジェラルド・バトラー)を病気で失い、
彼の死を受け入れられず引きこもり状態。
30歳のバースデーの日、
亡くなったジェリーからケーキとテープレコーダーのプレゼントが送られてきた。
それから次々と消印のない手紙がホリーのもとに届くようになる…。
アイルランドの新人作家セシリア・アハーンが執筆し、40か国以上でベストセラーとなった恋愛小説を、
「マディソン郡の橋」の脚本家リチャード・ラグラヴェネーズが映画化。
最愛の夫を失う悲劇に見舞われながらも、徐々に生きる力を取り戻すヒロインの物語。

良くもなければ悪くもないって感じでしょうか…
夫婦が本音をぶつけ合い、喧嘩したり仲直りするのは大切な事だと思いますが、
オープニングからハイテンションな喧嘩シーンを観せられると、こちらはこの二人の事をまだ何も解らないのに、いきなりでなかなか気持ちが付いていけずかなり萎えました(汗)
おまけにバトラーのトランクスにサスペンダー、ソックス姿の変なダンスにはドン引き!
ここでこの夫婦の愛情の深さを知らせたかったのかも知れないけど、
亡くなった後、夫から愛が込められた手紙が届くというお話はロマンチックはずなのに、ストーリーの展開もイマイチで手紙の内容にも引きつけられるものがありませんでした。

ヒラリー・スワンクは上手な女優さんだし、
笑いあり涙ありを演じ分けていますから退屈する映画ではないのですが、
何だかな~やはり彼女の顔がラブストーリー向きじゃないってことなんだろうなぁ…
時折、チャーミングに見えるんだけど、役柄上も気持ちの浮き沈みがあるからか殆どブチャイク。。。
(この人、口元がマット・デイモンに似てる?)
やはり彼女の持ち味は社会派な作品で生かされるんでしょうね。
周りの友達の発言含め、クスッと笑えるトコはあるし、回想シーンや一人でジェリーの感触を思い出したりするのは、女性の心をグッと掴む所だろうけど、泣きのポイントにはなりませんでした。
夫婦や家族の愛と絆、友情は程よく描かれているし、
もちろん最愛の夫を亡くした彼女の悲しみや喪失感は想像を越えるもので、哀しみを誘うのは間違いないのですが、ホリーの心情がストーリーに反映されてないと言うか、同じ調子で進んでいくだけで盛り上がりがない感じでした。

自分が亡くなってからの妻を心配し、手紙を綴ってくれてた夫なんて、どこにいるだろう?!
辛いけど、こんな男性を夫に持てただけでも幸せだと思います。
ジェラルド・バトラーだからクサくないし(笑)
陽気なアイルランド人、歌も披露してくれて素敵でした。(トランクスは要らない…苦笑)


母パトリシアを演じたキャシー・ベイツは、もう何も言うことなし。
流石の貫禄。
ダニエルを演じたハリー・コニック・Jr、本音の人で解りやすい良い人でした♪
ジェリーの幼馴染みかな、ウィリアムを演じたジェフリー・ディーン・モーガン。
この方、ハビエル・バルデムに似てて(笑)
「グレイズ・アナトミー2」心臓移植を待つ患者さんでイジーと恋に落ちた方。
映画は初めてなのかな~濃い顔なんで印象に残ってました!
俳優さん達は皆さんお上手なんだけど、脚本も残念~ラブストリーのヒラリーも残念。
劇中では素敵な愛の歌が何曲も流れ、それらしい雰囲気は出来上がってたのに、
エンドであんな歌を流す必要があるのでしょうか?
吹き替えのアニメならまだしも、洋画を観に来たのに聞きたくもない…最後の最後にとっても残念!
「ステップ・アップ」の時の誰かさんの歌に次いで、エンド途中退場しました。
2008年 10/18公開 アメリカ映画
監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
容疑者Xの献身
2008, 10. 18 (Sat) 17:01

貝塚北警察署管轄内で男性惨殺死体が発見される。
内海(柴咲コウ)と草薙(北村一輝)は、被害者の元妻花岡靖子(松雪泰子)へ聞き込みに向かう。
しかし、容疑者と目された彼女には完璧なアリバイがあった。
さっそく“ガリレオ”こと湯川学(福山雅治)に相談を持ちかける。
靖子の隣人で数学教師の石神哲哉(堤真一)が、湯川の大学時代の友人であることが判明。
石神がこの事件に深く関わっているのではないかと、湯川は疑念を抱き始めた…。
東野圭吾の「探偵ガリレオ」シリーズ初の長編で、直木賞に輝いた小説の映画化。
TVシリーズ「ガリレオ」のスタッフ・キャストが集結し人間ドラマを描く。

テレビシリーズの軽快な謎解きが好きで原作も読みました。
「容疑者Xの献身」の原作は読んでいませんが、
この映画はテレビシリーズのテイストは多少残しつつの別物、一線を引いた人間ドラマでした。
「HERO」のように、お茶の間感覚で観に行くと辛いかもしれません。
別れた夫、富樫慎二(長塚圭史 )にアパートを突き止められた靖子は、娘に暴力を振るわれ、はずみで富樫を殺してしまう。
隣人の石神は騒がしい音を聞きつけ、何かあったのかと訪ねて行く。
人生に絶望すらしていた冴えない天才数学者が、罪を犯してしまった母娘を救うべく完全犯罪を作り上げた。
少しネタバレです。

謎解き、トリックも見事ですが、靖子母娘へのアリバイ工作が素晴らしい!
警察の質問に顔色ひとつ変えることなく淡々と答える靖子を観ていると、ここまで動揺もせず上手く嘘をつけれるなあ~なんて思ってたけど、なるほどそんなことだったんだ!
そこまで人の心理を読んでシナリオを作れる石神は凄いし、
工藤邦明(ダンカン)が靖子に近づき始めてから、石神のストーカーみたいな行動が、
まさか、ダンカンを殺したり?!…と思ったけど(でも何故に松雪さんとダンカン?)
これも動機づけの伏線だったんですね。
自分の嫉妬のような感情まで トリックに利用して、既に別にやりきってしまってた彼の動機は、まさにこの母娘に対する献身的な愛なんだ…
その辺は、愛する人の為に(しかも一方通行)そこまで出来るのだろうか?と、疑問に思わないわけではないけど、
湯川が「あの石神が愛を知ったんだ」と驚くほど、
人が人を愛し、その人の為に何をしたいかなんて、決まり事がある訳でなく理屈でも解らない。
1度は諦めかけた人生に明かりを灯してくれたような隣人の母娘に対して、自分を犠牲にしても幸せになってほしいと願う石神を演じる堤さんが本当に上手で、ああ~こんな人いるのかもしれないなぁ~と感じてしまいました。
遺体の状況や石神の通勤コースに、ん?と思う伏線はあるのですが、月9の時のように単純な流れではない捻りの効いたトリックでした。

松雪泰子 も上手でした。
気の強い女性を演じるのも嵌ってますが、美人だけどいかにも男性運の悪そうな薄幸な女性がとっても良かったです。
工藤から「こんなものが届いた」と差し出された写真と脅迫文を見た時、
一気に押し寄せた不安と恐れの表情は素晴らしかったです。
彼女も演技の幅が広がってますね。
柴咲コウはちょっと可哀想なくらい見せ場がなく活躍してませんでした…
当然、2人の天才学者の頭脳戦は見もの。
「人に解けない問題を作るのと、それを解くのとでは、どちらが難しいか。」
さまざまな角度から問題を考える数学者と、思索、実験、証明を経て結論を見出す物理学者の見解の違い、何気ないセリフにも深い意味を持たせています。

これまで感情に流されることのなかったクールな湯川が、友情を取るか物理学者として自分を貫くか…
どちらを選んでも誰も幸せにならない選択に、押しつぶされそうになりながらも人としてのあり方を問われる葛藤があります。
それでも湯川の推理力は抜群!
痛快です。
テレビシリーズとはちょっと一味違うガリレオ福山さんでした。
堤さんがものすごく良かった!!
天才湯川に、彼こそ天才と言わせるほどの頭脳を持ちながら、
恵まれない環境から高校の数学教師になり、無関心の生徒相手に授業をするだけ。
目的もないまま日々を過ごし、老け込んで生きている男の風貌が、歩き方や背中や視線から伝わってくる。
毎朝隣からもれ聞こえる母娘の会話、弁当店でのわずかな時、靖子へ連絡する公衆電話でのやり取り…
工藤と靖子を見つめる視線、雪山で見せた鋭い眼…
感情を露にしない静かな演技に、彼の心の中が見えてくるよう。
ドラマ同様、最初に事件と犯人を見せられ、解っている状態で物語(謎解き)が始まりますが、
石神の“愛=献身”の選択に共感できなくても、矛盾であったり理屈で割り切れない人間心理を描いたこの映画に愛と友情を感じずにはいられませんでした。
爆発の実験シーンや雪山のシーンは映画だからのサービスでしょうね~
あまり必要性はなかったと思います…
でもこれまでのテレビドラマの映画化とは、明らかに違いました。
どうせ映画にするなら、本来これぐらいの作品であるべきだったでしょう。
これが新しい流れになると良いですね。
2008年 10/4公開 日本映画
監督 西谷弘
ステート・オブ・プレイ ~陰謀の構図~
2008, 10. 16 (Thu) 22:08
「謎のメッセージ」
なるべく確信に触れないように、軽くネタバレです

ケルビン事件担当のブラウン警部補が警備中の病院で殺害され、デラ(ケリー・マクドナルド)は証拠のスーツケースを警察に渡すべきだと言うが、
ヘラルド紙の編集部長キャメロン・フォスター(ビル・ナイ)とカル(ジョン・シム)はやんわりと拒否する。
ブラウン警部補の上司ベル警部(フィリップ・グレニスター)は、隠している情報があるだろうとキャメロンに激しく詰め寄る。
スティーブン(デービット・モリッシー)が妻アン・コリンズ(ポリー・ウォーカー)と離婚を考えていた証拠だとして、
亡くなったソニアと一緒に住むため、不動産屋に連絡先番号を残してある、と密告する匿名のファックスがデイリーメール紙に届いた。
マスコミ対策とエネルギー委員会の為に、アンはスティーブンと記者会見に同席し、お互いに間違いを犯したと虚偽の話をする。
ロンドンのホテルに宿泊するとマスコミに追われるため、アンはカルの自宅に泊まることになった。
ファックスの送り主を探すデラは、情報を握るダン・フォスター(ジェームズ・マカヴォイ)に接触。
ヘレンとピートが新たに加わったチームに、戦力になるからダンの情報を買って欲しい(雇って欲しい)とキャメロンの元へと連れてくる。
公にするなと警告されたダンは、キャメロンの息子だった。
ダンの情報では、ソニアの口座にはスティーブンの元で働き始めてからまもなく、毎月多額な報酬が振り込まれていた。
最初から離婚などする気がないスティーブンが送り主で、結婚の意志がないことを知ったソニアが悲観して自殺したのではないかと言う。
カルとピートの情報は、殺し屋からスーツケースを盗んだケルビンがソニアの携帯に電話していることから、
ケースの中身について知らされ多分慌てただろうソニアが、会社の公衆電話からあるビルの交換台に電話をかけていた。
そのビルはダンがファックスの送り主がいるのではないかと目星を付けていた場所だった。
ヘレンとピート、ダンの三人は、ファックスの筆跡から送り主がドミニク・フォイ(マーク・ウォーレン)だと突き止めた。
事情を聞かれたフォイは逃走。
アンの元には数ヶ月前、スティーブンの浮気を密告する手紙が来ていたそう。
多分それもフォイだろうと推測。
お酒を飲んで帰宅したデラは、階段で男とすれ違う。
自宅に入ると部屋の中が何者かに荒らされていた。
警察で事情を説明するデラは、すれ違った男は病院で見かけた警察官と似ていると証言。
バイク便の運転手の意識が戻り、発砲した男の似顔絵を作成。
その絵はデラが見かけた男と同じ人物だった。
ベルは捜索令状を持ち、ヘラルド紙にやってくる。
キャメロンはスーツケースを渡し、証拠隠滅?司法妨害?したとしてカルを逮捕した。
マカちゃんの情報で、点と点がまたひとつ結ばれましたが、残念、フォイは上手く目を誤魔化し逃走。

気丈に振舞っていたアンですが、カルの自宅でつい張り詰めてた糸が崩れたか…

うーん…やっぱ、そうなったんだよね…

カルはプレイボーイで女に不自由していないみたいなのに、何で?
同情したにしても、一応はまだ友人の奥さんだし…
なんか、お二人さん、ちょっと短絡的(汗)
それにあまり魅力的な女性じゃないんですが(おばさん臭い)~この女優さん、デカイ(苦笑)

警察官だと思ってた男が殺し屋と知って、ますます動揺してしまったデラ。

当然、スーツケースを持ち込んで隠蔽していたカルに手錠がかけられ(すぐ釈放されるだろうけど)
後は頼むと言われたダンの活躍も期待される来週♪
今週はスティーブンの登場が少なくて良かった(笑)
子供にも呆れられ(?)四面楚歌な感じなのに、この人、まるで他人事のよう…

花束抱えて妻の宿泊予定のホテルに行って、今更一体何を話すつもりなんだろう?(わざとらしい)
不動産契約もソニアが引越ししたがっていただけで自分は関係ないと言ったかと思うと、同居も視野にあったとすぐ認めるし

真面目そうな顔して嫌な男だわ!
今回から登場のマカちゃん

2003年のイギリスドラマなので、「ナルニア国物語」以前になるかな。
かわいい~

色白くて、悪戯っぽい眼差しと笑顔

男臭い役者が多い中で、一際爽やかです

「デスパレートな妻たち4」ウィステリア通りの新しい住人たち
2008, 10. 15 (Wed) 21:35
この6話が終了後、もしや始まるのかな~とも思いましたが、
未だホームページには何も記されてないし、
「ステート・オブ・プレイ」の前もイギリスドラマ「奥様は首相」だったので、
このままイギリスドラマ枠でいくのかも知れません…
あちらでは“シーズン5”が始まったのに、何だか遅れ感がする(苦笑)
春まで待たされてしまうのかも(´_`。)グスン
「シーズン4」に登場する新しいキャラです。
またまた濃い人たちが集まりました(笑)

キャサリン

元ウィステリア通りの住人。
亡くなったメアリー・アリスとスーザンは以前から知っているそう。
カリスマ主婦なので、ブリーと尽くぶつかりますが、彼女はプライドが高くて自信家で意地悪そう!!
好きになれないタイプだわぁ~(´へ`;ウーム
キャサリンの娘ディラン

この子、可愛いい~

スーザンの娘ジュリーの幼馴染ですが、ディランはあまり覚えてないようです。
キャサリンの夫アダム

キャサリンの再婚相手なので、ディランの実の父親ではありません。
産婦人科医。
スーザンの甥ティム

会計士。
スーザンに依頼されてやって来ますが、
モテキャラなので、問題を起こさないかスーザンの不安はつのるばかり。
リー&ボブ

ゲイのカップル

エリー

ガブリエルが家賃収入を得ようと部屋を貸した美大生。
見るからに怪しい…
大学生に見えないし(汗)
キャサリンの元夫のウェイン

警察官。
キャサリンに内緒でディランに近づきます

元夫の登場で、キャサリンの秘密は徐々に明かされていきます。
当然(苦笑)色んな人を巻き込んで。。。


キャサリンは「シーズン5」にも引き続き登場し、今回はプロモにも出てます

まずは早く「シーズン4」の放送をして欲しいですね

でもキャサリンってキツイ(こわい)ですよ、マジで…

ゲットスマート
2008, 10. 14 (Tue) 13:53

アメリカ極秘スパイ機関“コントロール”に所属する分析官マックスウェル・スマート(スティーヴ・カレル)は、現場で活動するエージェント試験にやっと合格。
しかし優れた分析能力を持つため、現場への昇格は見送られてしまう。
ある日、コントロール本部が世界征服を企む国際犯罪組織“カオス”の襲撃に遭い、
全エージェントの身元が明るみになってしまう。
整形手術で身元が割れていないエージェント99(アン・ハサウェイ)と、エージェント“86”となったスマートが急遽コンビを組むことに…
1960年代にアメリカで人気を博した伝説のテレビドラマ「それ行けスマート」を映画化。
極秘スパイ機関のおとぼけエージェント、マックスウェル・スマートが活躍するスパイ・アクション。

コメディの予告は、何度か観てると本編では笑いが半減するし、かと言って興味持てないと劇場へと足が向かないし…どの場面を出すかって至難の技でしょうね。
“玉すだれ”(?)のシーンは最初予告で観たとき、声殺して笑ってしまったんですが…
その点、この映画の予告は程よく出し過ぎてなく、上手く作られてたのではないかな~と思いました。
大爆笑ではないけれど全体的に笑いのテイストたっぷりで、
スティーヴ・カレルの個性が存分に生かされたスパイコメディ映画です。
40種類もの言語を読み取り、ターゲットが洩らすプライベートな会話からも心理を読み取るスマート。
エージェントへの昇格が見送られ落胆する中、突然のチャンスが舞い込みます。
初心者とは組めないと渋るエージェント99といざ出陣…

「007」のようなハイテク装置を持つものの、うまく使いこなせず、
ベタな笑いで次はこうなるんだろうなぁ~と解っていてもやっぱり可笑しい♪
飛行機のトイレは笑った!!!
スマートが生真面目であればあるほど、おとぼけ振りが絶妙。
巨漢の女性とのダンスシーンは最高ですね♪
思わず噴出しちゃいました~あのリフトは凄い!(上から吊ってたんだろうか~?笑)
お約束の下ネタは下品にならず軽く流し、ラストのオーケストラシーンに爆笑!
お爺ちゃんマエストロ、大丈夫?(爆)

スティーブ・カレルの“間”が自分には合うのかな~
笑いがしつこくなくて、目の動きひとつとっても表情が豊かというか。
笑わせてやるぞ~と力が入り過ぎてないトコが良いのかも。
「リトル・ミス・サンシャイン」ではガラリと変わり味わいのあるところ観せてくれたし芸達者な人ですね。
アン・ハサウェイ、可愛い系セクシーで良かったです。
ドジなスマートをサポートし、お色気チラリ~アクションばっちり!
最近のアンジー、ギリギリな印象が感じ始めたので、彼女にバトンタッチしたら良いかも(苦笑)
プリティなお姫様から一皮も二皮もむけましたね♪


アラン・アーキン、 ドウェイン・ジョンソン、 テレンス・スタンプなど、役柄の個性はそれぞれの俳優たちにぴったり。
ビル・マーレイなんて、木から顔を出しただけ(笑)
マシ・オカ、ネイト・トレンスの“ブルースとロイド版”がスピンオフされたとか。

笑いにアクション、ドラマな部分に政治も軽く皮肉りながら、キャラクター設定がしっかりとしてバランス良く楽しめました。
スマートの分析力と機転は、現場で意外な結果を生む事にも。
モアイ像男との戦い(笑)や衝撃のラブシーンは見ものでしょうか(爆)
アメリカのコメディは日本人には笑えないものが多いけど、これは誰にでも受け入れやすく楽しめそうだと思いました。
もちろん字幕では伝わらない細かな部分はあると思いますが、この映画、字幕もちょっと遊んでくれてました(笑)声と一緒に大文字になったり、語尾が変わったり。
靴電話、音声バリアなど色んなアイテムの使われ方も面白いです♪
あっ、ハゲにホッチキスも笑えましたぁ!
2008年 10/11公開 アメリカ映画
監督 ピーター・シーガル
ステート・オブ・プレイ ~陰謀の構図~
2008, 10. 09 (Thu) 16:50
「スキャンダル」
イギリス、ロンドン。
15歳の少年ケルビン・スタッグが男に射殺され、そこを通りかかったバイク便の運転手も撃たれてしまう。
同じ頃、政府のエネルギー特別委員会の調査官ソニア・ベーカーが地下鉄線路に転落し死亡。
彼女はエネルギー特別委員会委員長を務める下院議員スティーブン・コリンズ(デービット・モリッシー)の愛人だった。
ヘラルド紙の記者カル・マカフリー(ジョン・シム)と、デラ・スミス(ケリー・マクドナルド)が取材を進めていくと、
ふたつの事件に接点があることが判明。
射殺されたケルビンはひったくりの常習犯で、
駅の構内で金目の物が入っていそうな銀のブリーフケースを盗んだ所、その中にはスティーブンとソニアの写真、携帯、銃が入っていた。
携帯から連絡が入り、お金と引き換える約束をしていたが、ケルビンは何者かに殺されてしまった。
情報を得たカルは、ケルビンと一緒にいた少女から500ポンドでブリーフケースを渡してもらう。
デラはバイク便の運転手が収容されている病院に向かい、ブラウン警部に護衛を強化するよう告げるが、
病院の火災警報が鳴り患者を移動中、近くのビルから発砲されブラウン警部は亡くなる。
動揺するデラに犯人の顔は見たか?と問うカルに喰いかかるデラ。
そのデラを見つめる男…
人物紹介も兼ねての初回、展開はありがちでしたが先が楽しみな内容でした♪
単なる議員の愛人問題は、政治や石油業界へと絡み出していくようです。
「エネルギー特別委員会委員長」なんて、もう汚職(?)に塗れて利用されそう(汗)
怪しげな人物はあれこれといましたね~疑いだしたらキリがない(笑)
議員仲間は当然、スティーブンの奥さんが勤めるCD店(?)の人まで怪しく思ってしまう┐(´-`)┌
残念ながら、マカちゃんは次回からの登場でした。
カルのジョン・シムはまだ良いけど、
下院議員スティーブンのデービット・モリッシーは、若手議員って感じはすれど、
やはり苦手なタイプだなぁ~根暗なあの顔見てると、だんだん疲れてくる(;^_^A アセアセ・・
公式ページ
宮廷画家ゴヤは見た
2008, 10. 08 (Wed) 16:37

18世紀末スペイン。
フランシスコ・デ・ゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は、国王カルロス4世(ランディ・クエイド)の宮廷画家に任命される一方、権力や社会を批判する絵画も描いていた。
ゴヤは裕福な商人の娘イネス(ナタリー・ポートマン)と、
威厳に満ちたロレンソ神父(ハビエル・バルデム)の2枚の肖像画に取り掛かっていたが、
ある日、イネスが異端審問所に異教徒の疑いをかけられ捕らえられてしまう。
2枚の肖像画のモデルたちがたどる数奇な運命を、「アマデウス」「カッコーの巣の上で」の巨匠ミロス・フォアマン監督が、激動の時代を背景に描く歴史人間ドラマ。


この映画はゴヤが主人公ではありませんし、彼の伝記映画でもありません。
ゴヤが描いた肖像画の女性に心を奪われた神父、その女性は異端審問という制度で人生を狂わされ、
神父は臨機応変本能のまま、時代の変化を世渡りします。
時代に翻弄された二人の男女の運命が(と言っても、ラブストーリーでもありません)宮廷画家ゴヤの目を通して描かれていきます。
歴史モノで人間ドラマとなれば、難しいとか重いとか、壮大だとかが付き物かもしれませんが、
そんな印象は全くない解かりやすいストーリーで、中身が詰まっていて飽きさせることのないしっかりとした映画でした。
普通に学校で教えてくれた知識で大丈夫だと思います。
帰宅後、色々と調べたくはなりますが(苦笑)


イネスは兄たちと出かけた居酒屋で、豚肉を嫌がったことからユダヤ教徒の疑いがあるとされ、審問所への出頭を命じられた。
娘の身を案じた父トマス(ホセ・ルイス・ゴメス)は、ロレンソに会えるようにとゴヤに頼む。
夕食に招待されたロレンソは、イネスが拷問の苦痛に耐え兼ね、ユダヤ教徒だと告白したと言う。
トマスは「罪がなければ、痛みに耐える力を神がお授けになる」と主張するロレンソを天井から吊るした。
痛みに耐えかねたロレンソは、「私はサルだ…」と書かれた証書にサインをする。
トマスは拷問による告白の無意味さを知らしめ、娘が戻れば破棄することを約束し、多額の教会修繕費を持たせる。
ところが異端審問所長(ミシェル・ロンズデール)は、寄付金は受け取るものの、
告白を覆すことを認めるわけにはいかないとイネスの釈放は許可できないと言う。
トマスはついに告白書を国王に渡し、身の危険を感じたロレンソは国外へ逃亡した。

フランスでは革命後、ナポレオンのクーデターがあり大陸遠征がはじまる。
15年後、なんとロレンソは、フランス占領軍の司令官としてスペインに戻ってきた。
ナポレオン軍の侵攻により異端審問の廃止され、囚われていた人々は15年の歳月を経て解放される。
イネスと再会したゴヤは驚愕の事実を知ることとなる。
真相を確かめるためにロレンソを訪ねたゴヤは、今や聴力を完全に失っていたが、世の中の真実だけはハッキリと見えていた。


やはりハビエル・バルデムは怪演でした。
情熱と野心あふれるロレンソが、小声で「ふん……」と静かに肯くのは、小ばかにされてる感じ(笑)
こんな生臭い人間を演じられる人はそういないと思うけど、
激動の時代に身を合わせてきたロレンソは、今の時代にもこんな人はいるなぁ~と思いました。
前半と後半では職種も違うし、痛々しい姿になった時の選択は「私はサルと…」に容易に署名した自分への抵抗でもあったのだろう。
ラストに向けての演技は見もの。
存在感ある大きな体が小刻みに震える姿に、栄枯を感じずにはいられませんでした。
「ノーカントリー」も良かったけど、これまたとても良かったです!

ブタ肉を嫌がったため…なんて、そんなバカバカしい理由で15年も監禁されていたイネスを演じたナタリー・ポートマン。
チラ裸で拷問の場面や不潔な牢獄に閉じ込められたり「Vフォー・ヴェンデッタ」でも似たような痛い思いしてたのに~また可哀相~って思いました。
冒頭では本当に天使のように純真無垢でとっても美しいのに、後半は顔もゆがみ正気も失い…
苦痛と恐怖の中でロレンソにすがるような思いは、絶望の中での唯一の救いだったのでしょう。
開放されてからは、ひたすら失ったものを探す…辛かった。
ゴヤが天使のモデルにしたというくらいに清楚な前半と後半の変貌はショッキングでした。
ナタリーもとっても良かったです。

画家として最高の地位に登り詰めながらも、世の中や人間の真実を見つめ続けた画家ゴヤを演じたステラン・スカルスガルド。
今回はお顔にヒトデもフジツボもついていません(笑)
身長の高い方なので、見栄えも良く芸術家っぽい!
正直過ぎてどこか滑稽だったり。
女王の自画像にはクスッとなりました。
だからこそ、残された数々の作品に説得力があるのでしょう。

すべてスペインロケという映像は見応え十分!!
歴史的な街並みや建造物、生々しい場面も含め、時の雰囲気が物語へとドンドン引きこみます。
加えて、ここぞという場面にガツン!と素晴らしい音楽が♪
「アマデウス」の音楽はとっても良かったですが、この映画でも効果的に使われています(「アマデウス」ほど印象に残る曲ではないですが)
ラストシーンでは、子供たちが荷車の周りを楽しそうに踊りながら歌い、イネスの跡を追うゴヤの背中が映し出されとても印象の残るものでした。
2時間弱、ストーリー運びも良くあっという間でしたが、ひとつだけ残念なのはナタリーの二役。
後半、彼女がせっかくあれだけ身体張ってズタボロになっていたのに、別の人物まで演じてしまうと、解っていても何だか違和感を覚えてしまった。
本来ならその女性の数奇な運命の必然性も感じるんだろうけど、少し深みがなかった。
でもその分を引いても、秀作だと思います。

いくつもの場面で登場するゴヤの絵画。
恥ずかしながらゴヤの絵は「マドリード、1808年5月3日」とあと数点しか知りませんが、
冒頭、ゴヤの版画かな?が次々と映し出され、スペインの権力闘争と民衆の様子が明確に描かれています。
宮廷画家という立場だけでなく、ありのままの世の中を描き続けた絵画には真実があります。
ゴヤとロレンソ神父の会話…手は難しいので描くときは「追加の金」が掛かると言う。
ゴヤの絵画の手は多くを語っているのだそう。
また、ゴヤは版画家としても活躍しています。
版画だけでも300点近く制作しているそうです。
その銅板でしょうか?制作過程もとても興味深く観ることが出来ました♪
エンドロールには数々の作品が映し出されます。
こんな意味のある(失礼)エンドは初めて観たかも♪
最後の最後まで映画らしい映画を観させてもらったという気持ちです。
ゴヤについてはこちら
2008年 10/4公開 アメリカ/スペイン映画
監督 ミロス・フォアマン
僕のピアノコンチェルト
2008, 10. 07 (Tue) 00:16

高いIQを持つ6歳のヴィトス(ファブリツィオ・ボルサーニ)は、ピアノの腕前にも才能ある天才少年。
両親のレオとヘレンは、一流ピアニストに育てるべく音楽学校に通わせる。
過剰な期待からの唯一の救いは、祖父(ブルーノ・ガンツ)と過ごしている時だけだった。
12歳となったヴィトス(テオ・ゲオルギュー)の生活は、ますます息苦しく孤独なものとなっていた。
ある日、ヴィトスはマンションから落ち怪我はなかったものの、事故の後遺症でIQもピアノの才能も普通の男の子並みになっていた。
周りになじめない天才少年が、自らの進む道を見つけていく成長物語。
彼と大人たちの関係をユーモアを交えて描くヒューマン・ドラマ。
監督は「山の焚火」「最後通告」などの名匠フレディ・M・ムーラー。


タイトルとあらすじから想像した内容を、気持ち良い位に裏切ってくれた素敵な映画でした♪
良作です!
たった6歳でシューマンの「勇敢な旗手」を弾きこなし、IQも高いヴィトスのような子供を持てば、
親なら才能に期待をかけ教育熱心になりますね。
悪影響は排除し、できるだけ質の高いものを与えたい。
小さい時は少し自慢な子供ぐらいだったのだろうけど、周りから認められたり感心されたりすれば、段々その気になってしまって欲も出てしまう。
ヴィトスのママは、そんなにバリバリの教育ママのような描き方ではないけれど、
大好きなピアノの先生もシッターさんもクビにしちゃうし、
今の彼に取って何が大切でどう伸ばしていきたいのか見えていない。

発明家のパパがある会社に認められてからどんどん裕福になっていき、
教育にもお金をかけることができて、超一流のピアノ教師の元へと連れて行かれる。
ママも高級車に乗ってまるでセレブのような雰囲気になっちゃうし、ますますヴィトスは息苦しくなっていく。
振る舞いは大人のようだけど、まだ12歳の子供。
頭脳と精神のアンバランスがあるのは当然。
そんな時に起こった事故の後遺症は、たしなめたり叱らなければならない時に、
ヴィトスの心の奥まで深い愛情持って接してこなかった両親、特に母親にツケがまわってきたかのよう…
子供の将来や幸せの為に、できるだけ才能を伸ばしてあげたいと思うのは親なら当たり前のことで、
この加減のようなものが教育の難しさなのかもしれないなぁ~。
これは客観的に見ると凄く良く解るんだけど、いざ自分の事となると見えなくなるもの。
親である人は、この辺りの事が少しは身に覚えがあるのではないかな~
例え子供が天才児でなくても(苦笑)

せっかくの才能は、親が引いた線路のミスで潰されてしまうこともあるでしょうが、
ヴィトスに取って田舎で家具工房を営む祖父の存在は、ある意味駆け込み寺のような場所であり、
癒しと人生の教訓を与えてくれる大切な支えです。
押し付けがましくないさりげないアドバイスは、大人の心にも染みてきます。
彼とおじいちゃんの関係はこの物語でとても重要で、コミカルさも日常的で自然体。
おじいちゃんも自分の息子のことだったら、余裕が持てないかもしれないけど、“祖父と孫”の距離感だからこそ成立するんだろう。
健康な普通の子になったヴィトスは、普通の学校に通い友達と自転車を乗り回し、
聞きたい音楽を聴いて週末は祖父の家でゆっくりとした生活を楽しむ。

ところがこの後の展開は、こんなウハウハな事があるなら嬉しくて仕方がない♪(笑)と思うほど、
有り得ないことなんだろうけど、ここまで上手く運ぶと観ていて小気味が良いし痛快だった。
たった12歳のヴィトスが自分で考え自分で行動したから面白い。
それにおじいちゃんのお買い物が最高!(笑)
ヴィトスは大好きな両親とおじいちゃんの力になりたかったんだろう。
何より自暴自棄などにならず、自分自身で考えて壁を乗り越えたこと、“ピアノ”と向き合うことだけではない展開の意外性も楽しめました。
おじいちゃんから息子夫婦に宛てられた手紙には、親子の愛情を感じました。
ラストにチューリッヒ室内管弦楽団と演奏されるピアノ協奏曲は、
もしかしたら子供ゆえの荒さがあるのかも知れないけどお見事でした♪

主人公ヴィトスの12歳を演じるテオ・ゲオルギューは、自身も国際的なコンクールでの優勝実績を持つ新進ピアニストで、劇中の演奏シーンも彼自身がこなしています。
劇中でもシューマン、バッハ、リスト、モーツァルトなど、すばらしいピアノ名曲を聴かせてくれます。
演技までできるなんて、素晴らしい!
彼も上手だったけど、6歳の頃のヴィトス、ファブリツィオ・ボルサーニがスゴク可愛い!
くりくりな目に生意気さと無邪気さが同居していて、とっても可愛い子でした!
祖父役を「ヒトラー ~最期の12日間~」のブルーノ・ガンツが好演。
素敵なおじいちゃんでした。
2007年 11/3公開 スイス映画
監督 フレディ・M・ムーラー