スターリングラード
2008, 05. 14 (Wed) 23:42

1942年9月、ソ連兵士たちが軍用列車に詰め込まれ、
ナチス・ドイツの猛攻で陥落寸前スターリングラードに運ばれていた。
ドイツ軍の激しい攻撃の中、ヴォルガ河を渡るヴァシリ・ザイツェフ(ジュード・ロウ)は、
羊飼いの家で育ち小さい頃から祖父に射撃を仕込まれた名手だった。
彼の狙撃の腕を眼にした青年将校ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)は、
兵士の士気を高めるためスナイパーとしての任務をヴァシリに与える。
次々とドイツ人士官を倒す彼の活躍は機関紙を通して報じられ、ヴァシリはたちまち英雄に奉られていった。
ヴァシリとダニロフは友情を深めながらも、
レジスタンスの女兵士ターニャ(レイチェル・ワイズ)に共に惹かれていく。
ヴァシリの名はドイツ軍にも届き、
彼の暗殺を目的に狙撃の名手ケーニッヒ少佐(エド・ハリス)が送り込まれてきた。
「薔薇の名前」のジャン=ジャック・アノー監督が、
実在した第二次大戦の伝説のスナイパーの極限状況における愛と苦悩を描いた戦争ドラマ。

第二次世界大戦スターリングラードでのナチスドイツとロシア。
戦争映画ではあるけれど、それよりも一対一男同士の一騎打ちでスリリングな展開。
射撃の腕前で次々とナチの将校たちを暗殺するヴァシリの活躍で、ソ連軍の士気は高まるが戦況は一進一退を繰りかえす。
ヴァシリの存在が驚異となるナチス側は、
彼の暗殺だけを目的とするスナイパー、ケーニッヒ少佐を送り込む。
この暗殺者同士の戦いは周囲の人々を巻き込んで、戦場ではあるけれど別の次元で進行していく。
ヴァシリもケーニッヒも目標地点で互いの動向を探りながら、何時間も息を潜めてその時を待ちます。
先も読めずハラハラして緊張から疲れさえ覚えるけど、とても見応えがあります。
相手の裏の裏、更にその裏…
スナイパーとしての腕はケーニッヒ少佐の方が上のようで、
ヴァシリも十分限界を感じていても彼を後押しする様々な要因で任務を追行せざる追えない。

偶像化されたヴァシリは、仲間の犠牲も伴い過酷な運命を背負い苦悩してしまう。
ヴァシリを英雄化することでロシア軍の士気を狙ったダニロフ。
その二人に絡んでくる優しく強く美しいターニャ。
ヴァシリだけを狙うケーニッヒ少佐の執拗さ…
そして、物語の鍵を握る小さなスパイ。。。
普通の戦争映画と違って、戦争の裏側を描き出す視点は新鮮なサスペンス。
その流れは逆に戦争の残酷さ、非常さを感じることができるのではないかと思います。

腕があり自信と責めるだけでなく、過酷な状況で力及ばず悩むヴァシリを演じるジュードは、
時に控えめで戸惑いの中でも強い意思と、引き返せないからこその意地を感じました。
ヴァシリをヒーロー化し、結果恋敵にもなるジョセフファインズ。
女性絡みもあるけれど、彼の立場なりの苦悩は観ていると決して否めません。
ナチの冷酷無情の代表のようなスナイパー、ケーニッヒ少佐のエドハリス。
こんな役をやらせたら、彼の右に出る人いないのでは?
軍服姿もお似合いでした。
ターニャ役のレイチェル・ワイズは戦場において汚れていても美しい。
明確な主義主張の女性で、ヴァシリと惹かれあうのも自然の流れ(美男美女)
男達の雑魚寝でジュードを見つけたら、誰でもその側に潜り込みたいでしょう…(笑)
戦争映画の観念だけではない作品だと思います。
俳優さん達も素晴らしいし、戦火に置かれた様々な人間模様が描かれ、
展開はスリリングでサスペンスでもあり、緊迫感があり最後まで引き込まれる映画でした。
ジュードの目が標的を覗く…
綺麗なブルーアイです♪(あっ、エド・ハリスも~笑)
2001年 4/14公開 アメリカ/ドイツ/イギリス/アイルランド映画
監督 ジャン=ジャック・アノー