ミスト
2008, 05. 11 (Sun) 23:58

メイン州の田舎町。
ガラス窓を付き破るほどの激しい嵐が去った翌朝、
妻に頼まれ地元のスーパーへ息子ビリー(ネイサン・ギャンブル)と買い出しに出掛けたデヴィッド(トーマス・ジェーン)
軍人やパトカーが慌ただしく街を往来し、あっという間に店の外は濃い霧に覆われた。
ジム(ウィリアム・サドラー)が霧の中に何か不気味な物体がいると店に飛び込んでくる。
店内の人々は次第に理性を失いはじめ…
「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」に続く、
原作スティーヴン・キング、フランク・ダラボン監督コンビによる3作目。

ネタバレします。
窮地に追い込まれた人間心理はよく描かれているとは思うので、
こんな状況になったら自分はどうするだろうなんて事は考えますけど…
これ、私はダメでした。
霧の中には確かにいます!
この前観た「クローバーフィールド」に似たようなモンスターが…
へんてこな虫もたくさん出てくるので、それ系が苦手な方は嫌でしょうが、
「クローバーフィールド」のように次々と容赦なく襲ってきたり派手な破壊はしません。
この霧の中のモンスターがどうこうと言うパニック・ホラーじゃないんです。
それよりもっと怖いのは、店内で恐怖に追い詰められた人間がどんな心理状態になるか、
どんな行動を取るかです。
モンスターの存在など信じず外へ出て行く人、耐えられず自殺してしまう人、
変人扱いされていたカーモディ(マーシャ・ゲイ・ハーデン)にいつしか洗脳されてしまう人。


最初は誰もが聞く耳持たずで相手にしなかったカーモディの「神の意志だ」「神の裁きだ」の説教が、
状況の悪化で最もらしく煽られると、不安に感じる人たちからカリスマ教祖のように支持を集め店内の人たちが二分してしまう。
人間は弱いものですから、何かにすがりたいと思うのは当然だろうけど、これは怖いものがありました。
こんな精神状態に陥った時に変な宗教に入り込まれてしまうのでしょうか~(苦笑)
軍の科学者の研究失敗から発生した霧は、彼女の言う神の領域を犯した人間への罰になるのでしょうし、
この地球上で人間の驕りがあると言われれば、それも否定はしませんが、
彼女に追随していき「生贄」なんて展開にはぞっとしました。
まあ、彼女の最後にはすっきりしてしまいましたが(汗)

ここに残るか脱出するかでラストに向け明暗が分かれてしまいます。
その震撼のラストは原作にはないそうですが(キングはOKだそう)
確かに、後はご自由に想像してください~のエンドではなくハッキリとした結末だし、
ある意味震撼のラストですが…
いいの、これで…?!!
店内での人々の行動や心理は、
他にやりようがないの?とツッコミたいやら、イライラを感じましたが、
それなりの丁寧さで進んでいったのに…
脱出した5人が精神状態の極限だったとしても、
ガソリン切れであえなくそんな選択をするものかと疑問でならない(ガソリン切れは最初から想像していたのだし)
恐怖と絶望は、間違った判断を起こさせるものなのでしょうか。
「僕を怪物に殺させないで…」
息子との約束は果たしたことになっても、
デヴィッドにとって残されたのは絶望以外の何でもなく、それは観る側にも何の希望もなく彼の今後も諦めざるおえないような心境になりました。
こんな“絶望”を描きたい映画だったの…
救われない結果の映画でも、自分なりに納得できる内容ならそれで良いのですが、
でも、これはどう収めて良いものか。
深い意味があるのでしょうが、私にはちょっと受け入れ難くい内容でした。

マーシャ・ゲイ・ハーデンはとても存在感がありました。
スーパーの(副)店長のセリフ
「人間2人いれば、最後は殺し合う。だから政治と宗教がある」
これが印象に残っています。
最初に静止を聞かず子供が待っているからと店を出て行く女性。
送ってくれるか?の問いに誰もがノー。
悪態なセリフを吐いたような記憶がありますが、
彼女が正しかったのか、それとも運が良かったのか…
搬送車のシーンがなんとも皮肉な感じでした。
エンドロールの途中から音楽が消え、ヘリコプターや戦車かな、そんな音だけになっていくのですが、
これも何だか辛いです~もう少し待ってればと思わずにいられません。
2008年 5/10公開 アメリカ映画
監督 フランク・ダラボン