敬愛なるベートーヴェン
2008, 05. 03 (Sat) 01:55

1824年ウィーン。
音楽学校に通う学生アンナ・ホルツ(ダイアン・クルーガー)は、
初演を4日後に控え「第九」の楽譜が完成しないベートーヴェン(エド・ハリス)の元へ、
写譜師(コピスト)として派遣される。
彼を尊敬するアンナは彼の粗暴な振る舞いに戸惑うが、ベートーヴェンはアンナが優れた才能の持ち主であることを見抜き、徐々に彼女に信頼を置くようになっていく。
尊大で傲慢で難聴でもあった彼を助けたのはアンナだった。
ベートーヴェン晩年の大作「第九」完成と師弟愛を描いた感動ドラマ。

ベートーヴェンは「エリーゼのために」も素敵な曲ですが、やはり「第九」ですね。
クリスマスから年末、これはもう定番です。
映画のハイライト「第九」の初演シーン。
難聴でマエストロとしての役割を果たせないベートーヴェンの影武者のように、
アンナが裏でサポートします。
二人の視線と呼吸は「第九」の旋律に乗り、奏でられた音での陶酔が見事に伝わってくる。
何でだろう…聞けば熱くなって、ただ訳もなく涙が出る、、、
言葉では言えない感動があります。
写譜師アンナの戸惑いと静かな強さ、信念、直向さ…
彼女を認めることによって新たな世界を手に入れるベートーヴェン。
代表作である「第九」は、二人の調和が無ければ生み出すには至らなかったのでしょう。
伝記としたらどうか解りませんが、ドロドロした愛憎劇ではないし、
天才=変人であろうから、その素行に多少の嫌悪感はあっても、
師弟関係の素敵な物語になっていたのではないでしょうか。

数人の実在人物をモデルとした架空の作曲家志望のアンナ。
ダイアン・クルーガーは美しく凛とした意思の強い女性で、
心底ベートーヴェンを敬愛する気持ちが伝わります。
あの(笑)エド・ハリスは、音楽室で見たベートーヴェンそのもの。
二人とも役に嵌っていて、雰囲気も人間性も上手に現れていました。
時節もありますが、「第九」の演奏場面を観るだけも価値があるのでは…と思います。
私はもうそのシーンは涙ボロボロでしたぁ~
2006年 12/9公開 イギリス=ハンガリー
監督 アニエスカ・ホランド