イカとクジラ
2007, 07. 09 (Mon) 16:25

1986年。
ブルックリン、パークスロープに住むバークマン家。
かつては人気作家だったが今は落ち目のバーナード(ジェフ・ダニエルズ)と新進気鋭の作家ジョアン(ローラ・リニー)の夫婦は離婚を決意。
2人の子供である16歳のウォルト(ジェス・アイゼンバーグ)と12歳のフランク(オーウェン・クライン)は、父親と母親の家を行き来する生活を余儀なくされる。
パークスロープは、作家やアーティストが多く住むことで有名なNYの高級住宅地。
カフカなど作家の名前が日常的に飛び交う家庭で、
父親の“本も読まず映画を見ない奴は知的ではない”という考え方が家族の柱になっているよう。
当然、子供達は背伸びして育ったのだろうが、両親の離婚に混乱してしまう。
大人になれない親と、子供になれない子供…そんな家族の物語。
またまた、クジラ

アカデミー賞脚本賞ノミネートをはじめ、アメリカ映画賞を賑わせた作品。
こんなのが好まれるのかぁ…私みたいに俗っぽい人間には難しい(苦笑)
今は日本でも離婚なんて珍しい事ではないし、それがお互いの為になるのならサッサと分かれた方が良いと思う。
でも子供がいる場合はどうだろうか…
夫婦だけの問題ではないだろうし、ましてこの二人のような年齢に差し掛かってる場合はより慎重にするべきとも思う。
もちろん、夫婦仲の悪い環境に子供を置いておくのも良いとは思わないけど。
でも観ていてこの両親へのイライラが頂点に達したので、離婚しようがしまいがどちらにしても同じだっ!!
これじゃ息子たちが可哀想よ!

離婚の原因は、母の浮気が父の我慢の限界を超えてしまったらしいですが、
母も父に対して色々なことがあったでしょうが、これと言う理由ははっきりされてません。
週の何日かを分けてそれぞれの家で過ごすわけですが、
父親は子供相手のテニスや卓球にムキになり、食卓では息子たちに文学を語る。
本当は結構小心者で虚勢ばかり張っていて、母親を批判する事で自分を偉く見せてるように錯覚してる。
母親は長男を“chicken”(弱虫君)と呼ぶ。
息子の音楽コンクールに行き冷たくあしらわれると、
“わざわざ見に来てあげたのにその態度は何よ”と平手打ち。
次男が父親家滞在日に突然やって来ると、自分は浮気の真っ最中?!
“今日は家じゃないでしょう~帰りなさい”
はあぁ???
アナタ、ただ誰とでも浮気していたい病ですかぁ?
長男は父の方に、次男は母の方にそれぞれ肩入れしてるけど、
居場所を見失って長男は盗作、次男は酒を飲んだり自慰行為。
とにかく救いようのない家族の姿を見せ付けられてるようにしか感じなかったので、見る人を選ぶ映画でしょう。
家族に起こっている出来事は深刻で、それをサラッと描きコミカルなタッチであるにはあるかもしれないけど、
登場人物の誰にも感情移入できない作品は、観ていて疲れる。
最近は『バベル』もそうだったけど、
幼い子の自慰行為って見せられるのはとても不快なんです(>_<)
人間、親であろうが子供であろうが誰もが欠点だらけ。
相手への思いやりや、その人の立場で考えれなかったり、
稚拙な行動に出てしまったり…
そんなみっともなくて恥ずかしい部分は自分にもあるけれど、それを共感する事はこの両親からは何もない。
家族を描こうとするあまりか夫婦関係の描写が薄いので、
ただの自分勝手なバカ親としか思えない。
共同観察という形も子供を愛しているからではなく、お互いに親権を譲り合うことができなかった意地の張り合いだと思えるから。
自分も20数年親をやってるけど、
苦しいこともあったりするし、理想なんかも持っちゃうし、ある程度の年齢までは責任もあるし、心配は一生続くだろうし…
親として、平凡でいいから子供の幸せを願うだけ。
その為に少しでも良い環境作りって、親の役目なんではないかな。
でも親として、妻として女として~使い分けというか~そんなバランスの中で生活するのは簡単なことではないけど、
皆そんな中で頑張ったり失敗したりして、
親も子も夫婦もそれぞれが成長出来れば一番良いのだろう。
親だって子供だって同じ人間で感情の動物なんだから。
タイトルの『イカとクジラ』はニューヨークの自然博物館にある展示物の名前。長男ウォルトが母親と観に行った『ロビン・フッド』の映画の思い出。
ダイオウイカとマッコウクジラが戦っている巨大模型が怖くてちゃんと見ることができなかったが、
ラストでウォルトはこの展示物を見に行きます。
両親の離婚に冷静さを持って向き合ってたけど、本当は傷だらけだったのよね…
現実を受け入れて彼らの中から一歩飛び出たように感じました。
子供時代、
何か心の中のモヤモヤを乗り越えていく経験は誰でもあるものですね。

ノア・バームバック監督は『ライフ・アクアティック』の脚本家だそうで、
その鋭い人間観察眼とギャグの笑い、とあったこの作品もちっとも解からなかったから、
私とは相性が悪いのね。
子役さんの演技は上手でした。
ジェフ・ダニエルズ、ローラ・リニー、こんなに嫌悪感を感じさせられるなんて名演技でしょう(苦笑)
2006年 12/2公開 アメリカ映画
監督 ノア・バームバック
かげろう
2007, 07. 09 (Mon) 01:54

1940年6月フランス・パリ。
戦争で夫を亡くした教師のオディール(エマニュエル・ベアール)は、
13歳の息子フィリップと7歳の娘カティとナチスの侵攻から必死に逃れていた。
途中、爆撃に見舞われてしまい、
オディールたちは17歳の青年イヴァン(ギャスパー・ウリエル)に助けられる。
母子はイヴァンを警戒しながらも、彼に導かれるまま森の奥深くへと進んでいく。
やがて無人の屋敷に辿り着き、安全なこの地で避難生活を始める。
青年と未亡人がお互い惹かれあっていく“異色エロティックドラマ”
とかあるけど、そう???
オディールは時に父親の役割もしながら子供を守り、
先が見えない避難生活の中で、イヴァンに対して警戒心を抱くのも当然。
危険な謎や陰があるようなイヴァンだけど、
生きる術は身につけているので頼りにはなる。
イヴァンを兄のように慕いながらも、長男として母や妹を守ろうとするフィリップ。
幼さで緊張感のないカティ。
母子の輪の中に入り込んだイヴァンが、
時にオディールは母であったり先生であったり、
フィリップには兄であったり親友であったり…
それぞれの人間関係の複雑な心理が描かれているので、
お互いが意識していたとしても、
なぜ愛に発展したのかイマイチよく解らない(苦笑)
自然の流れでそうなった…とも感じ難くかった。
ただ何もかも投げ出したくなってしまったのだろうか~その辺りは中途半端じゃないかなぁ!
しかもあのラブシーン…
ただ寂しくて、不安で慰め合ったとしても。。。
それって、あり??!(苦笑)
もしあの後捕まったりしなければ、
二人はドンドン深みに嵌って行ったんだろう。
ラストも唐突であっけなかったなあ!
美しい田舎の風景と戦時下で出合った二人の一度きりの“かげろう”のような恋ならば、
切ないラブストーリーかな。

丸坊主のギャスパー君、やはり綺麗な顔立です(*^^)
内容云々より、ギャスパー君の魅力は存分に楽しめますね♪
怪しい魅力のある演技の方がイメージに合ってるのでしょうか。
息子フィリップ役の子も美形でした(^^)
2004年 1/24公開 フランス映画
監督 アンドレ・テシネ